■日本文学・日本語学・日本史学と上方文化本の図書出版


太宰治研究23



目次


〔作品とその生成要素〕
「惜別」から「人間失格」まで

「潔白の独立親和」―『惜別』の成立と小田嶽夫『魯迅伝』― 佐藤伸宏
「竹青」と田中貢太郎訳、公田連太郎註『聊斎志異』 押野武志
『お伽草紙』の「瘤取り」と童話 秋枝美保
『お伽草紙』の「浦島さん」と童話 高橋由貴
溺れる醜男―「カチカチ山」と童話― 飯田祐子
『お伽草紙』の「舌切雀」と童話 高橋和幸
『パンドラの匣』の「民衆」 佐藤秀明
「トカトントン」再論―保知勇二郎書簡との関係から― 長野秀樹
「ヴィヨンの妻」と佐藤輝夫訳『大遺言書』他 浦田義和
「斜陽」と「桜の園」 中村三春
〈灰色の震え〉と倍音の響き―太田静子のノートと太宰治「斜陽」― 大國眞希
「斜陽」一面―作品生成要素としての聖書― 千葉正昭
「渡り鳥」と堀口大学訳ヴァレリイ『文学論』―笑いと切実― 細谷 博
「人間失格」と堀井梁歩訳『ルバイヤット異本留盃耶土』 九頭見和夫
「人間失格」と『上田敏詩集』 三谷憲

〔作品論〕
津島修治「温泉」―共有される身体感覚― 久保明恵
太宰治「侏儒楽」を〈読む〉―同芥川龍之介「侏儒の言葉」を遠景にして― 宮坂 覺
「埋め合せ」、「再び埋め合せ」について―「愛情」と「苦笑」と「悗鵑棔廖宗\湘弔蠅
「先づ図書室を見舞ふ」論 堀 竜一
「文芸時評― 十月の創作」 斉藤利彦


〔アンケート回答〕
昭和一〇、一一年の三篇―「今月の便り」「作家としての心構へ・覚悟」「文学賞を与へるとすれば」― 小林美恵子
昭和一四、五年のアンケート回答四篇―時代へのまなざし― 山田吉郎
断片の織りなす〈座〉―太宰治・昭和一六年の〔アンケート回答〕四篇― 舘下徹志
自己へのこだわり―昭和一八年 アンケート回答― 太田鈴子
昭和二一、二二年の三篇―「自分の推す新人と文学の方向」「逢ひたいひと」「昭和二十二年に望むこと」― 田中俊男


〔回想記〕
太宰治の青春―太宰治と初代― 中村貞次郎
廃兵の鼓動―貞次郎在京時代― 中村壬生男

〔資料紹介〕
未発表原稿、中村貞次郎「太宰治の青春―太宰治と初代―」について 安藤 宏
「読書ノート」大(ママ)宰治 斎藤理生
尾崎一雄、寺田守宛各葉書一通 野見山陽子

〔作品評釈〕
「二十世紀旗手」評釈(三)斎藤理生
「HUMAN LOST」評釈(五) 山口俊雄





編集後記

 
 「太宰治研究」第二三輯には、「作品とその生成要素」「作品論」「アンケート回答」「回想記」「資料紹介」「作品評釈」の六種の稿を掲げた。
 「作品とその生成要素」欄では、昭和二〇(一九四五)年一月早々に起稿され同年「二月末完成」した「惜別」から、昭和二三(一九四八)年三月上旬に起稿され同年五月一〇日頃脱稿した「人間失格」までの「作品とその生成要素」について論じて貰った。第二次世界大戦の末期から敗戦後の作者逝去一か月程前までに脱稿した一二篇の作品である。日本近代文学研究の各分野で、優れた業績を残している一五氏によって、調査の行き届いた力のこもった論究がなされた。さまざまな新見の提示されたこれら論究は、向後の作品研究の進展に、多くの寄与をするにちがいない。一五氏に感謝する。
 「作品論」欄には、五篇の論考を掲載した。太宰治の中学校、高等学校時代の随想的な作品で、かつて単独で論じられたことのない作品について、各々精緻に論究して下さった。稿を寄せられた五氏に、お礼を申し上げる。
 「アンケート回答」欄は、このたび初めて掲載した。昭和一〇(一九三五)年以降に執筆された、「断簡零墨」ともいえるアンケート回答について、五氏が真摯に論究して下さった。感謝の意を表したい。
 「回想記」欄には、二篇の稿を掲げた。太宰治の中学時代からの親友中村貞次郎氏の未発表遺稿と、この遺稿に関わるご子息中村壬生男氏の回想記とである。この二稿が寄せられるに際し、安藤宏氏を初め津島園子氏、酒井梢子氏、中村壬生男氏に尽力をいただいた。諸氏に謝意を表しておきたい。
 「資料紹介」欄には、三篇の稿を掲げた。安藤宏氏「未発表原稿、中村貞次郎「太宰治の青春―太宰治と初代―」について」は、標題のとおり、中村貞次郎氏の遺稿についての解説である。遺稿の執筆脱稿の時期や現時点での問題などが的確に紹介されている。斎藤理生氏「「読書ノート」大(ママ)宰治」は、久方ぶりの、活字化された太宰治の文章の発見である。織田作之助とのかかわりも興味ぶかい。野見山陽子氏「尾崎一雄、寺田守宛各葉書一通」は、「生誕一〇五年太宰治展―語りかける言葉―」(県立神奈川近代文学館、二〇一四年四月五日発行)に紹介されていた神奈川近代文学館所蔵の全集未収録書簡二通を紹介して貰った。三氏の紹介の労に感謝する。今輯に掲載を予定していた「太宰治ビブリオグラフィー 研究参考書二〇〇九〜二〇一〇」は、紙幅の都合で次輯回しにした。
 「作品評釈」欄には、前輯に続き、斎藤理生氏と山口俊雄氏とによる評釈を掲げた。斎藤理生氏の「「二十世紀旗手」評釈(三)」は、「四唱」から「六唱」までの評釈を掲げ、山口俊雄氏の「「HUMAN LOST」評釈(五)」は、「二十七日。」「二十八日。」「二十九日。」「三十日。」「三十一日。」「一日。」「二日。」「三日。」の評釈を掲げた。両氏の周到で精緻な検討は、作品をより正確に深く豊かに感受するための貴重な手がかりを与えてくれるにちがいない。
 なお、太宰治研究の先駆者鳥居邦朗氏の訃報を、安藤宏氏と渡部芳紀氏とから受けた。最近鳥居邦朗氏は、『昭和文学史試論―ありもしない臍を探す』(ゆまに書房、二〇一三年一月二五日発行)を上梓し、「戦時下の太宰文学」(『太宰治直筆原稿集第一巻』雄松堂書店、二〇一四年二月一日発行)の稿を掲げ、神奈川近代文学館「友の会の集い、太宰治展記念講座」で、二〇一四年五月二四日「戦時下の太宰―浪曼的完成への道」を講じるなど、元気な活躍ぶりを見せていた矢先の訃報であった。二〇一四年八月二五日の逝去、享年八一歳。謹んで哀悼の意を表する。(後略)(山内祥史)
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