セミナー 万葉の歌人と作品全12巻
<企画・編集>神野志隆光・坂本信幸
平成11年5月配本開始 A5判・上製 各巻本体価格3500円
平成17年11月全12巻完結

| 本シリーズの企図は、主として昭和四十年代以降の『万葉集』研究を振り返り、その成果を集約するとともに、新しい展開の方向性を示そうとすることにある。 国文学の分野で、研究書・論文が加速度的に増加してきたことは年々厚くなる『国文学年鑑』に見る通りだが、研究の個別化・細分化が進んでゆくなかで、それらの成果を見渡し、整理する必要も大きくなっている。研究事典、ハンドブックの類や、論文のアンソロジーが相次いで刊行されることに、事態はよく示されているといってよい。それは、『万葉集』研究にとって痛感されるところなのである。 研究の基本はあくまで作品を読むことにある。作品から遊離し、作品のそとで幻想を広げるような論議は意味をもたない。『万葉集』研究が注釈的研究をつねに中心としてきたのは、正道をゆくものであった。その方向を継承して、本シリーズは、「歌人と作品」と題し、歌人ごとに作品を見てゆくかたちで各巻を編成した。作品別研究史を積み上げながら、同時に作者(歌人)論として、総括することをめざすものである。 昭和四十年代以降の研究を対象としたのは、さきに昭和五十三年から刊行された『万葉集を学ぶ』全八集(有斐閣刊)があるからである。『学ぶ』は巻次ををおうかたちで作品別に編成され、作品中心の研究史として大きな役割を果たしたが、爾来すでに二十年を経た。その後の展開を受け止め、研究の現在を踏まえて、作品を中心として成果と問題を集約することが今強くもとめられている。本シリーズはそれにこたえようと意図するものである。 本シリーズが、研究者にとっての指針としてのみならず、一般の読者、万葉愛好家のための案内としても意義あるものとなることと信じ、座右の書となることを願う。 1994年4月 神野志隆光 坂本信幸 <刊行委員>(五十音順) 青木周平/岩下武彦/内田賢徳/佐藤隆/品田悦一/平舘英子/鉄野昌弘/芳賀紀雄/広岡義隆/身崎寿/毛利正守 |
御推薦の言葉(50音順) |
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| くめどもつきぬ新しいいずみを 日本女子大学名誉教授 青木生子 戦後の大転換期をくぐりぬけて、とりわけ古代文学の分野においては、さまざまのありようを呈して研究が飛躍的に進展した。万葉集についても、いまや、民俗学、歴史学、比較文化学、訓詁注釈学等々の知の領域区分にこだわること自体が無意味に感じられるほどに、対象の真髄に襞深く分け入ってゆく研究姿勢が、実感される昨今である。 ところで万葉集は、いうまでもなくわが国最初の純然たる文学作品である。詩歌という形をとっているが、ここには文学の要求するあらゆる原質と萌芽とが無尽蔵に内包されている。しかもその作品は、何と今の私たちの心にじかに響いてくるものがあることか。その秘密は何なのか。 有名歌人や代表作品はもとより、無名の一作者、たった一つの作品や歌ことばの中にも、文学の小宇宙が宿っているはずである。くめどもつきない古典のいずみが、ここにまた、新しい若いしなやかな手で掬いあげられようとしている。私は胸ときめく思いである。 |
| 学会総出陣の書 筑波大学名誉教授 伊藤博 『セミナー 万葉の歌人と作品』。拙著『万葉集の歌人と作品』と名が似る。「作品」は「作歌」とすべきかとも考えた、なつかしい名である。 執筆陣、総勢延べおよそ二百五十人。錬達の士十人ばかりを除いては、いわゆる団塊時代の人々を中心に、少なからぬ大学院生にまで及ぶ。まさに学界を背負い背負わむとする学究の徒総出陣の書である。かかる陣容に能う限りの適切な主題を提供、力作を期待したのが本書である。 「東歌」に「我が恋はまさかも愛し草枕多胡の入野の奥も愛しも」という歌がある。明朝遠く旅立つ男が、共寝する床で妻を抱えながら叫んだ形の歌で、第二句の「まさか」は共寝の床に在る今の今の意以外ではないと読める。かくして注釈史を辿ると、つとに『仙覚抄』に、一言「マサカトハ、寝所也」と指摘しているのであった。先学懼るべし。時に覚えた感動は忘れがたい。 本セミナーからは、至るところでこの感動に浴することができるはずである。陣容は壮健にして若々しい。不眠に堪える力がある。力は感動の渦巻を呼び起こし、学界の命脉として茂り栄えて行くことであろう。 |
| 全階級的な布陣の歌集 詩人 大岡信 『万葉集』とひと口に言うが、その内容は伝承時代の歌まで含めればおよそ三百年間にわたるとされる。社会の全階級にまたがる人々の生活から涌き出た、おのずからなる歌が、『万葉集』の実質を成しているが、この全階級的な歌の布陣は、これ以後のどんな和歌集にも求め得ない万葉だけの特質だった。 しかも、この『万葉集』にしてからが、作者の大半は、生涯の輪郭さえあまり明らかではない。けれどもほんのわずか露頂しているのみの彼らの生活が、素朴ながらに、今のわれわれにも身にしみて興味をそそられるのは、なんと言っても歌というものの功徳なのである。 少しでも詳細がわかれば、その分一層深くを知りたい気持に誘われるのが万葉集の魅力である。今日の厖大な万葉学の蓄積をふまえ、各論に精緻をこらした『セミナー 万葉の歌人と作品』に期待するところは大きい。 |
| 細部が読め全体が見渡せる 歌人・早稲田大学教授 佐佐木幸綱 万葉集の研究は日進月歩、日々急速に研究が進んでいる。一首の歌、一組の作品それぞれの読みが、ディテイルにわたって精密化されてきている。その一番若い部分、新しい部分のディテイルが読め、全体が見渡せるこの企画はまことにありがたい。 とくに興味深いのは、各作者個々の顔つきがわかるかたちの全十二巻の巻立てである。こういうかたちで作品論が書かれ並べられれば、おそらく、研究史の現在が描いている万葉歌人像が、おのずから立体的に描き出されることになるだろう。 万葉集の研究が、研究のための研究で終わってしまってはもったいない。日本の詩歌史の基層を照らす光となってほしい。創造活動の現在に活力を与えるエネルギーであってほしい。この本が日本詩歌史を考え、現在進行形の詩歌史を推進する人たちにも、おおいに読まれることを期待している。 |
各巻タイトル・刊行予定
| 第一巻 | 「初期万葉の歌人たち」 | 本体3,500円 | 平成11年5月刊行 | ![]() |
| 第二巻 | 「柿本人麻呂(一)」 | 本体3,500円 | 平成11年9月刊行 | ![]() |
| 第三巻 | 「柿本人麻呂(二)・高市黒人・長奥麻呂・諸皇子たち他」 | 本体3,500円 | 平成11年12月刊行 | ![]() |
| 第四巻 | 「大伴旅人・山上憶良(一)」 | 本体3,500円 | 平成12年 5月刊行 | ![]() |
| 第五巻 | 「大伴旅人・山上憶良(二)」 | 本体3,500円 | 平成12年10月刊行 | ![]() |
| 第六巻 | 「笠金村・車持千年・田辺福麻呂」 | 本体3,500円 | 平成12年12月刊行 | ![]() |
| 第七巻 | 「山部赤人・高橋虫麻呂」 | 本体3,500円 | 平成13年9月刊行 | ![]() |
| 第八巻 | 「大伴家持(一)」 | 本体3,500円 | 平成14年5月刊行 | ![]() |
| 第九巻 | 「大伴家持(二)」 | 本体3,500円 | 平成15年7月刊行 | ![]() |
| 第十巻 | 「大伴坂上郎女/後期万葉の女性歌人たち」 | 本体3,500円 | 平成16年10月刊行 | ![]() |
| 第十一巻 | 「東歌・防人歌/後期万葉の男性歌人たち」 | 本体3,500円 | 平成17年5月刊行 | ![]() |
| 第十二巻 | 「万葉秀歌抄」 | 本体3,500円 | 平成17年11月刊行 | ![]() |