新刊案内(00年2月)


 『公宴続歌本文篇・索引篇 公宴続歌研究会編 本体40,000円
  (索引叢書46)A4・上製函入(二分冊分売不可)1736頁 ISBN4-7576-0031-3 日本学術振興会助成図書

 宮中で催行された公式の歌会で試作された各種の詠草類を"公宴御会歌"というが、このたび翻刻出版することになったのは、宮内庁書陵部に写本二十九冊本として伝存する『公宴続歌』である。本続歌は、第一冊に所収される永享十一年(1439)の「禁裏御会」から、第二十九冊に所収される元和四年(1618)の「聖廟御法楽和歌」に至る、四百六十余箇度の宮中歌会歌を収載する膨大な和歌資料群であって、室町中期から江戸初期に至る皇室関係の歌人から、堂上以下の廷臣歌人に至る詠作のほとんどを収録している。本書は、このような室町中期以降の和歌研究にとって必須の文献資料である。本書の刊行によって、比較的研究の遅れていた室町時代以降の和歌研究が飛躍的に進展することは間違いあるまい。(公宴続歌研究会 代表 三村晃功)





 『万治御点校本と索引 上野洋三編 本体9,500円
  (索引叢書45)A5・上製函入 255頁 ISBN4-7576-0006-2 日本学術振興会助成図書

 『万治御点』とは、万治二年五月から寛文二年四月まで、三十四回にわたって行われた和歌稽古の記録をいう。指導者は後水尾院で訓練を受けたものは、後西天皇や烏丸資慶・中院通茂以下の廷臣で、別にすでに古今伝受を相伝していた飛鳥井雅章などの人々をも含む。この鍛錬をふまえて、これらの人々の中から新たに古今伝受を継承する四名が出たことが、その最も顕著な成果であったが、広く宮廷に和歌学習の気運を醸成させた点でも、宮廷歌学の復興に大きな影響をもたらした。
 これまでさまざまの書名を持った諸本が、各地にバラバラに存在したために、本書の果した意味もほとんど理解されないままであった。宮内庁書陵部本を底本として、数種の写本を校合し、利用に耐える本文の構築をめざした。あわせて各歌の初句索引と作者索引を作成し、参照の便をはかった。詠歌と添削と批評が日時を明記されて読める稀有の資料であり、近世和歌史理解の根本資料といえる。





 『『往生要集絵巻』詞章と絵の研究』 西田直樹著 本体22,000円
  (研究叢書242)A5・上製函入 713頁 ISBN4-7576-0027-5

 『往生要集絵巻』は阿弥陀信仰の布教を目的として制作された絵巻である。また、江戸時代の全期間を通じて刊行された「仮名書き絵入り往生要集」諸版本の祖本でもある。
 絵巻の詞章は、『往生要集』の「大文第一 厭離穢土」と「大文第二 欣求浄土」を絵と漢字仮名交じりの詞章によって書きあらわしている。この絵巻の詞章は、従来の「仮名書き絵入り往生要集」のように、単に漢文の詞章を書き下したものではない。漢籍や謡曲、釈教歌等を加え、訳述工夫を凝らして読み手の理解を容易にしている。
 これまで『往生要集絵巻』の成立時期は室町時代であるというのが定説になっていた。しかし、『往生要集絵巻』絵と詞章について、それぞれ分析と研究を行った結果、絵巻の詞章が依拠した『往生要集』は、寛永八年版本または寛永十七年版本であることが判明した。したがって『往生要集絵巻』の成立時期は、従来定説とされてきた室町時代ではなく、江戸時代(寛永八年から寛文三年の間)である事を、本研究によって証明する事ができた。
 また、『往生要集絵巻』の詞章の国語学的な分析と研究によって、片仮名「セ」の表記が江戸時代的である事、「マナハン」「入マヘ」「アヤカリモノ」等、江戸時代的な語が使用されている事も指摘している。





 『洛東遺芳館所蔵古浄瑠璃の研究と資料』 山田和人著 本体12,000円
  (研究叢書247)A5・上製函入 376頁(うちカラー20頁) ISBN4-7576-0032-1

 洛東遺芳館には、和書、絵画、調度など多岐にわたる膨大にして保存状態のよい資料が所蔵されている。今回は、そのうち、近世の芸能及び演劇関連資料の整理を行った成果を収める。なかでも注目されるのは、『源平軍論』『弘法大師出世之巻』『熊野権現開帳』の古浄瑠璃三種であり、本書には、それぞれの古浄瑠璃についての論文、翻刻、影印を収めた。『源平軍論』は、すでに紹介されている江戸板とは異なる上方板の正本であり、その存在は全く知られていなかった。『弘法大師出世之巻』は、当館にのみ所蔵される稀覯本であり、井上播磨掾の高弟である井上市郎太夫の現存する唯一の正本である。播磨掾の没年の推定にも資するところ大である。『熊野権現開帳』は、従来より知られていた東大本の欠落を補うことのできる貴重な一本である。また、調査の過程で発見された、未公開の新出資料、勝川春章の役者絵本『三芝居役者絵本』の解題と影印を追加した。本書は、現在、シカゴ美術館に所蔵されている『役者倭花』(仮題)の森田座相当部分である。最後に、「近世芸能・演劇関連資料目録」を掲げた。





 『藤野古白と子規派・早稲田派』 一條孝夫著 本体5,000円
  (近代文学研究叢刊21)A5・上製 288頁 ISBN4-7576-0033-X

 二十三歳と八ヶ月でピストル自殺を遂げた藤野古白は、一般には『古白遺稿』中の作品によってより、正岡子規の評伝「藤野潔の伝」によって記憶されている文人で、子規派の天才肌の俳人として知られる。一方、東京専門学校(早稲田大学の前身)では坪内逍遙に師事して演劇を学び、会心の戯曲『人柱築島由来』を「早稲田文学」に発表したが、逍遙の『桐一葉』と競合して文壇的には黙殺された。
 本書では、これまで見落とされがちだった劇作家としての側面を視野入れ、二つの交友圏を生きた古白の実像と、その交友の実態、および近代演劇草創期において師弟対決となった二つの戯曲の成立過程を究明。あわせて、日本近代戯曲史の劈頭を飾るローマン主義戯曲『人柱築島由来』を収録する。
 第一部の序説では、ジャーナリズムに厭世論論議をひきおこす契機となった古白の自殺の原因を島村抱月あて書簡などから検討し、厭世論の帰趨を論じる。以下、子規の『筆まかせ』、東京専門学校在職当時の漱石が被った排斥運動の経緯、虚子による子規派のモデル小説『俳諧師』、碧梧桐と『湖泊堂蔵書目』を介して、古白との交友の実相をさぐる。つづいて、逍遙、抱月、宙外ら早稲田派の文学者との交渉を概観し、二つの戯曲の史的限界と可能性を論じた。第二部では、初出『人柱築島由来』と『湖泊堂蔵書目』を翻刻し、他に年譜と人名索引を付した。
 子規は古白の作品について、「余の贔屓目より見るも文学者として伝ふるに足らざるなり」と断言し、この峻厳な評価が、後の古白観を固定した感があるが、本書ではそうした呪縛からの解放をこそ目指した。





 『太宰治研究7』 山内祥史編 本体5,000円
  (定期刊行物)A5・上製 302頁 ISBN4-7576-0026-7

  〈作品論特輯〉「東京八景」から「誰」まで
〔作品論〕「東京八景」論 山下真史/太宰治「みみづく通信」「佐渡」論―「波の音」の問題を中心に 清田文武/「佐渡」論 跡上史郎/「清貧譚」論 大野正博/「服装に就いて」論 ―異性装と国民服の間― 井上諭一/「令嬢アユ」―〈無邪気〉な心の反照― 宮崎真素美/「千代女」から女性独白体へ、そして太宰治へ 柴口順一/死に至るまでの懐疑 ―「新ハムレツト」を読む― 勝原晴希/「風の便り」論 田中良彦/「誰」論―昭和十六年前後の太宰の小説観をめぐって― 中丸宣明〔回想記〕義兄太宰治とその周辺 石原明/祖母きえとその周辺の人々 津島慶三〔資料紹介〕木村庄助日誌「巻四」と「巻五」 浅田高明/太宰治「女生徒」成立の背景―有明日記との相関をめぐって― 相馬正一/太宰治全集未収書簡―津島れい宛― 米田省三/太宰治ビブリオグラフィ 一九九四〜一九九五 山内史/〔作家論〕太宰治とメリメ 柏木隆雄/シラーと太宰治 奥村淳/太宰治と聖書―一九四〇・四一年を中心に―遠藤 祐/太宰治と社会主義運動―1930(昭和5)年後半期― 島田昭男〔作品評釈〕「富嶽百景」評釈(一) 川崎和啓




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