新刊案内(01年2月)


 『大乗院寺社雑事記研究論集 第一巻』
 大乗院寺社雑事記研究会編 本体7,500円
  (大乗院寺社雑事記研究論集) A5・上製 335頁 ISBN4-7576-0092-5

 「大乗院寺社雑事記」は、室町・戦国期を見る上で、なくてはならない史料である。かつて林屋辰三郎氏を中心として、日本史研究会の一部門として史料研究部会(通称大乗院寺社雑事記研究会)が、四十年余の活動を続け、『大乗院寺社雑事記総索引』を刊行している。
 平成十年(1998)、帝塚山学院大学人間文化学部を活動場所として発足した新大乗院寺社雑事記研究会は、先学の研究業績を受け継ぎ、「大乗院寺社雑事記」の関連研究を進めている。
 このほど、七名の「大乗院寺社雑事記」関連研究をまとめて、『大乗院寺社雑事記研究論集 第一巻』を刊行する。
 本書は、「大乗院寺社雑事記」関連研究が新たな段階に入ったことと、室町・戦国期研究が、より詳細な史料分析を必要とすることを訴える書である。

〔内容目次〕序にかえて 大乗院寺社雑事記研究会 T史跡 大乗院寺社雑事記の史跡 森田恭二 U国人・侍 中世後期畿内国人層の動向と家臣団編成―大和国古市氏を中心に― 田中慶治/室町・戦国期大和国東山内北部の政治構造―狭川・簀川氏の動向を中心に― 永井隆之/大和国「国人」越智家栄の動向について―身分制の観点から― 綾部正大/中世後期の若党に関する一考察―大和国を中心として― 田中慶治/国人古市氏の馬借・関支配について―南山城を中心にして― 田中慶治/東播守護代別所則治の権力形成過程について 渡邊大門 V文化・芸能 稚児愛満丸二十八年の生涯 森田恭二/中世猿楽者の存在形態 森田恭二/『大乗院寺社雑事記』に見る連歌興行(一)―康正三年(一四五七)〜長禄二年(一四五八)― 鶴崎裕雄 W歴史地理 中世都市奈良の近世的変容 金井 年/編集後記―大乗院寺社雑事記研究会の歩み― 大利直美





 『明治初期文学の展開後退戦の経絡 槇林滉二著 本体9,000円
  (槇林滉二著作集2) A5・上製函入 493頁 ISBN4-7576-0075-5 日本学術振興会助成図書

 明治維新後、日本は奇妙な近代化の道を辿った気配がある。すなわち、維新直後、遅れを取り戻そうと急激に近代化西欧化を図り、そののち、ゆっくりと変転、反動の波の中で近代日本を整備していったようである。著者はそれを「後退戦」と称し、副題にその意を封入、全三部仕立てでそれらの経絡の下瞰を試みている。
 第一部は四章よりなり、急激な近代化とその反転の相を、開化期の明治初期小説に探り、その志と変転をS・スマイルスの「西国立志編」の受容状況に、更には明治初期日本を席巻したH・スペンサー哲学やキリスト教受容の姿に追い、併せて川上眉山にその相を徴した。
 第二部は明治のオピニオンリーダーの一人徳富蘇峰とその領導した民友社の動向に属目、民権運動、基督教とのかかわり等にその変相を検索し、第三部はそれら全像を大きく俯瞰した。
 全体を通して、日本近代とは何であったか、その文学や思想の原景について顧望したものである。

〔内容目次〕第一部 明治初期文学提要 第一章 明治初頭の文学(開化と戯作/志の時代)/第二章 一つの思想原景(H・スペンサー哲学の時代/H・スペンサー哲学の展開)/第三章 キリスト教の開示(植村正久「真理一斑」の機構/小崎弘道「政教新論」の論理)/第四章 川上眉山の文学の位相(初期川上眉山考/川上眉山研究/川上眉山の意味) 第二部 民友社の文学一斑 第一章 民友社文化圏(徳富蘇峰と自由民権運動/徳富蘇峰とキリスト教)/第二章 民友社文学と漢学(初期民友社派と漢学/徳富蘇峰初期と漢学)/第三章 徳富蘇峰の文学論小景/第四章 民友社文学の圏域と基底(圏域/一つの基底) 第三部 明治・大正の思想と文学/初出一覧





 『第三者待遇表現史の研究』 永田高志著 本体10,000円
  (研究叢書256) A5・上製函入 308頁 ISBN4-7576-0067-4 日本学術振興会助成図書

 日本語における第三者敬語の大きな変遷の一つとして古代の絶対敬語から現代の相対敬語への変遷であることについては意見の一致するところではあるが、その詳細については明らかにされていなかった。本書では話し手と第三者、聞き手と第三者という二元的関係から、これまでの敬語体系を絶対敬語、身分敬語、序列敬語、内外敬語という分類を行っている。中古では身分敬語が、中世では序列敬語が、近世からは内外敬語が使われ始めたと結論付けている。この変遷はあくまでも規範的公的言語の敬語体系であって、庶民の私的敬語では脈々として絶対敬語が使われ続けている。現代の相対敬語は公家から武家に継承された公式言語を明治期の標準語として受容した結果一般に広まったものであると結論づけている。本書ではその変遷の過程を性別、使用場面、階層を考慮に入れ社会言語学的視点から数量的に明らかにしている。

〔内容目次〕第一章 はじめに/第二章 「源氏物語」に見る第三者待遇表現/第三章 「平家物語」に見る第三者待遇表現/第四章 「虎明本狂言」に見る第三者待遇表現/第五章 「捷解新語」に見る第三者待遇表現/第六章 前期上方語における第三者待遇表現―上方世話狂言・浄瑠璃を通じて―/第七章 後期江戸語における第三者待遇表現―南北の生世話物通じて―/第八章 江戸後期庶民語における第三者待遇表現―洒落本・滑稽本・人情本を通じて―/第九章 明治前期における第三者待遇表現―黙阿弥の散切物を通じて―/第十章 現代敬語における第三者待遇表現/第十一章 方言に見る第三者待遇表現/第十二章 結論  索引





 『続撰和漢朗詠集とその研究』 柳澤良一編著 本体15,000円
  (研究叢書265)A5・上製函入 432頁 ISBN4-7576-0087-9 日本学術振興会助成図書

 平安時代の和漢朗詠集・新撰朗詠集の後を継いで編纂された、典型的な近世の朗詠集である『続撰和漢朗詠集』は、「朗詠」と名が付くものの、本来の朗詠とは関わりが薄く、むしろ奈良・平安時代の漢詩文や和歌、唐宋の詩文のアンソロジーといった内容の書である。編纂者は、古代日本漢詩を一覧するための恰好の書として定評のある市河寛斎の『日本詩紀』を校訂増補したことでも知られる若林友堯で、嘉永五年(一八五二)五月に刊行された。漢詩文の摘句五九八首、和歌二二六首の計八二四首を収め、規模としては和漢朗詠集・新撰朗詠集を上回り、採録範囲も多岐に渡る。しかも出典不明句と散逸句をたくさん収録していて、平安朝の漢詩文が決して多く残っているとは言えない現状では、一等資料とはいえないが、特に我が国古代の漢詩文を研究する上では、『日本詩紀』と共に重要な参考資料となる。
 本書は、川口久雄氏旧蔵本によって本文を翻刻し、漢詩文には返り点を付すなど、詩歌の競演の様を読んで楽しめるように工夫した。また、漢詩文の一字索引と和歌の各句索引、作者索引を付け、さらに、それぞれの漢詩文句や和歌の出典等をできる限り幅広く検索して載せることで、現存する漢詩文や和歌との本文異同も容易に分かるようにした。
 古代日本漢詩文研究の基本資料の一つとなろう。

〔内容目次〕『続撰和漢朗詠集』について―近世の朗詠集の一典型―  本文篇 続撰和漢朗詠集 巻上/続撰和漢朗詠集 巻下/典拠等一覧・校異 索引篇 漢詩索引/和歌索引/作者索引/検字表(音読み・総画数)





 『染田天神連歌研究と資料 山内洋一郎編著 本体10,000円
  (研究叢書266)A5・上製函入 227頁 ISBN4-7576-0088-7 日本学術振興会助成図書

 染田天神連歌とは、大和山地の染田に鎮座する菅原天神神社を尊崇する人々により、二百年余もの間継承された連歌をいう。この地の土豪たちは、戦乱相次ぐ中も信仰を共通の心として、毎年一度の法楽の連歌会に結集した。現在は、遺構連歌堂と、千句連歌、縁起、興行記録、連歌会運営規定等、連歌製作に直接する遺品の他に、経済基盤を示す講田取得地券など、多数の文書が残っている。
 本書は、第一章に中世史学の永島福太郎氏の論を得て、大和山地の史的位置、ここに生成した染田天神連歌の意義が闡揚され、以下の章(染田天神連歌、天神講、染田天神年表、連歌次第)で、編者の研究と史料翻刻が続く。さらに、毎年の当番(年預)の交替を整理して各氏族の動態を明らかにし、天神講の創始から終末に至るまでの展望を行っている。
 ここに染田天神の特色が明らかになり、研究と資料が公開された。埋もれていた貴重な遺産は、更なる新しい研究を待っている。

〔内容目次〕序文に代えて 永島福太郎  第一章 連歌の発達と奈良の連歌 連歌道の成立/奈良の連歌/染田天神の連歌会 第二章 染田天神連歌 連歌資料/『染田天神縁起』/恒例連歌と立願連歌/年預次第/創始と変遷 第三章 天神講 『染田天神縁起』/『染田天神連歌記録』/『国民郷土記』、『北吉品聞書覚書』/天神講の遺風、及び遺跡/天神講文書 第四章 染田天神連歌年表 第五章 連歌次第(千句連歌) 「連歌次第目録」(年次順)/保存の現況/連歌次第の修訂/翻刻/染田天神連歌のことばと表現 染田の常夏の花―永享六年六月二十四日の朝を想い、本書後記に及ぶ―





 『近世百人一首俗言解の研究』 永田信也編著 本体10,000円
  (研究叢書263)A5・上製函入 272頁 ISBN4-7576-0079-8 日本学術振興会助成図書

 近世の俗言解の資料としては、『古今集遠鏡』や『古今和歌集鄙言』等が有名であり、利用もされているが、「百人一首」の俗言解については、わずかに『百人一首峯梯』の影印本と、『百人一首小倉の山踏』の翻字が有るくらいである。本書は、この二書と、本居大平著『百人一首梓弓』十本の俗言解部分を翻字したものである。
 『百人一首梓弓』には明治に翻字されたものがあるが、資料としてはまったく役にたたないものである。大平は『百人一首梓弓』を上梓する考えはなかったようで、自筆本や転写本として残っている。諸本を眺めてみると、そこには大平の推敲課程が如実に見て取れるのである。解釈の変更や、語彙の置き換え等が数多く見られ、国文学の面からしても国語学の面からしても資料的価値が高いと言えるのである。
 そこで本書では、新たに管見に入った十本の諸本を四類に分類して、各類の異同を対校する形で示し、見やすい形で資料として提供するものである。

〔内容目次〕凡例 T 翻字篇 U 研究篇 序章 近世における俗言解の流れ(近世における俗言解/近世における「百人一首」の俗言解/『百人一首梓弓』諸本概説) 第一章 『百人一首峯梯』と『百人一首梓弓』附箋本との関係(解全体に関はるもの/部分的に改変したもの) 第二章 「梓弓」諸本間の関係について(「古今集」を出典とする歌の俗言解の場合/「古今集」以外の歌集を出典とする歌の俗言解の場合/四類間の関係) 第三章 清島本類の関係(表記上の異同/三本間に見られる語彙的異同/複数解を持つものについて) 第四章 記念館本類の関係(日比谷本と記念館本との関係/永平本と日比谷本との関係) 第五章 活字本類の関係(俗言解以外の部分について/俗言解の部分について) 終章 をはりに





 『太宰治翻案作品論』 木村小夜著 本体4,800円
  (近代文学研究叢刊25)A5・上製 256頁 ISBN4-7576-0097-6 日本学術振興会助成図書

 〈中期〉太宰を特徴づける翻案の方法を駆使した「女の決闘」及び戦時下の二つの作品集各篇に関し、原典との詳細な比較検討を中心とした作品論を展開することによって、太宰にとっての翻案という方法の意味、その特質を具体的に明らかにする。
 とりわけ従来の研究が手薄であった『新釋諸國噺』では、太宰の西鶴作品への深い理解とこれを最大限に生かしたといえる構造的で緻密な翻案のなされ方を分析し、これまで〈戯画化〉の指摘にとどまりがちであった人物造型の必然性を物語に即して解明している。
 また、『お伽草紙』では時代背景と物語内容を直結させる従来の〈融和〉の読みを見直すなど、先行研究の整理とそこからの前進も試みた。時代につれて変移する人間と規範との関係のありよう、他者との関係の中に生きることの宿命性とそこにおける言葉の様相、またそれらをめぐる物語はいかに語られ得るか、を作中に跡づけていくことで、近代的人間観では捉えきれない、太宰の見た人間像が浮かび上がる。

〔内容目次〕序章 太宰治の翻案をめぐって 第一章「女の決闘」論 第二章 『新釋諸國噺』論 一 「貧の意地」/二 「大力」/三 「猿塚」/四 「人魚の海」/五 「裸川」/六 「義理」/七 「女賊」/八 「赤い太鼓」と「粹人」 第三章『お伽草紙』論




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