新刊案内(01年1月)


 『古代中世文学研究論集 第三集』 伊井春樹編 本体9,000円
  (定期刊行物) A5・上製 610頁 ISBN4-7576-0094-1
  伊井春樹先生還暦記念

 古典文学研究は、近年とみに作品ごとに細分化され、ジャンルや時代を超えたコミュニケーションが容易でなくなりつつあるのが現状であろう。大阪大学古代中世文学研究会では、発足以来十年を経、その間各自の研究テーマを共通の場でたえず発表し、相互に批判しながら共有の財産として研鑚に努めてきた。そのようにして研究会の会員は、狭い自分の研究世界だけに閉じこもるのではなく、古典文学研究に共通する方法を模索し、互いの成果摂取して成長していったと自負している。
 本書に収めた論考は、中古・中心としながら、古代から近世とのかかわりにいたるまでを対象としている。ただ、いずれにおいても本研究会の基本方針である、徹底した資料批判と深い読解を背景にした内容となっており、学界への大きな問題提起であるとともに、研究の進展に寄与するものと思う。
 今後も、清新な思考力と旺盛な資料発掘等に邁進し、意欲的な長編の力作も含めた論集にしたく念じている。

〔内容目次〕古今作者の官職をめぐって―〈公的文学としての和歌〉の担い手― 滝川幸司/古今集時代から後撰集時代への屏風歌の変化―子日をめぐって― 田島智子/歌語りの実際と伊勢の歌 加藤雄一/御陵の桐壺帝 藤井由紀子/明石一族の皇位継承権獲得の表現―『源氏物語』明石巻における催馬楽「伊勢海」引用を中心に― 岡田ひろみ/『源氏物語』における空蝉の出家 チョーティカプラカーイ アッタヤ/源氏物語の中の手習巻という寄生体 加藤昌嘉/源氏物語古写本における傍記異文の本行本文化について―天理図書館蔵麦生本「若紫」の場合― 伊藤鉄也/もう一つの源氏物語―梗概書と連歌における源氏物語の世界― 岩坪 健/富をめぐる話と『宇治拾遺物語』―現実から現実の彼方の物語世界へ― 大村誠一郎/瓜を詠み込む歌―付・『師輔集』の「大和瓜」の歌― 堤 和博/稲の名を詠んだ和歌 佐藤明浩/『僻案抄』古筆資料の検討 海野圭介/『中務内侍日記』攷―弘安十一年二月十三日野上行幸記事をめぐって― 阿部真弓/『金文玉軸集』とその瑞に記された和歌―『明恵上人行状』の一記事から― 山崎 淳/『體源抄』の生成 中原香苗/輻輳する伝承の層―『直談因縁集』と中世物語・語り物文芸― 近本謙介/『大仏供養物語』考 箕浦尚美/『後素説』について 中本 大/河村秀根『狭衣入紐』について―自筆稿本跋文の解釈と作成事情を中心に― 川崎佐知子/『伊勢物語秘注事』の解説と翻刻―東海大学附属図書館桃園文庫蔵本― 松原一義/『伊勢物語』段別研究論文目録[平成元年〜平成一〇年] 本田恵美/豊子ト訳に見る『源氏物語』の受容―「和歌」と「もののあはれ」訳を中心に 胡 秀敏





 『今昔物語集の研究』 池上洵一著 本体15,000円
  (池上洵一著作集1) A5・上製函入 615頁 ISBN4-7576-0061-5 日本学術振興会助成図書

 説話文学の雄編『今昔物語集』をめぐって、成立と伝来、欠文、翻訳と受容、構造と文体、説話の生成と伝承の意義、歴史的または同時代史的位置づけなど多角度から幅広く検討。着想は柔軟に研究方法は堅実に、作品としての方法を解明する。
 素材としての説話の方法と『今昔』の作品としての方法とを峻別し、その対立、葛藤あるいは共鳴、増幅の相を追求して、説話集の作品論的研究に新しい境地を切り開いた著者の、『今昔』に関係する代表論文を集めて新たな見地から編集したもの。巻末には詳細な索引を附し、浩瀚な研究への接近を容易にしている。
 『今昔』以外の説話について論じた姉妹編『説話と記録の研究』とともに、著者の多年にわたる説話研究の集大成である。

〔内容目次〕第一編 成立と伝来 一 鈴鹿本をみつめる/二 基礎的諸問題の検討/三 成立論の周辺 第二編 欠文の語るもの 一 欠文の語るもの/二 共通欠文をめぐって/三 天皇名の欠文/四 依拠資料の文体 第三編 翻訳と受容の方法 一 説話受容態度/二 受容の方法/三 説話の選択/四 原話と『今昔』とを分けるもの/附 往生伝の系譜と『今昔物語集』巻十五 第四編 構造と文体 一 天竺部の展望/二 震旦部の展望/三 本朝仏法部の基盤/四 巻廿五の分立/五 「思量リ賢キ」こと/六 文体と表現の系譜 第五編 説話と伝承 一 『今昔物語集』の猿神退治/二 『今昔物語集』の芋粥/三 説話の虚構と虚構の説話/四 藤原山蔭説話の構造と伝流/五 [断章的各話論]原話との乖離/民間伝承の論理/『善家秘記』の面影 第六編 『今昔物語集』の周辺 一 説話の想像力/二 説話から軍記へ/三 説話集と口承説話/四 中世説話文学における『三宝感応要略録』の受容 書名・地名(含、寺社名)・人名(含、神仏名)索引





 『説話と記録の研究』 池上洵一著 本体13,000円
  (池上洵一著作集2) A5・上製函入 541頁 ISBN4-7576-0062-3 日本学術振興会助成図書

 『打聞集』『三国伝記』その他の説話集はいうに及ばず、『玉葉』 『明月記』などの公家日記、『江談抄』『中外抄』『富家語』など言談の記録、新たに紹介する各種の古文献、古写本の類に至るまで、平安後期から室町時代に至る幡広い時代の多様な資料を縦横に分析し、説話と記録の方法とその変遷の様相を論じる。
 論者の視野はときに説話集の作品論的研究の枠を越えて、場と話題の関係、話題の連関、説話の背景や記録の方法など、説話研究の一般的、基盤的な諸問題の解明にも連動している。巻末には詳細な索引を附し、多岐にわたる研究への接近と、多方面からの利用を容易にしている。
 『今昔物語集』について論じた姉妹編『今昔物語集の研究』とともに、著者の多年にわたる説話研究の集大成である。

〔内容目次〕第一編 公家日記の方法 一 読書と談話/二 口承説話における場と話題の関係/三 説話の生成/四 公家日記における説話の方法 第二編 言談の記録 一 『中外抄』『富家語』の展望/二 『中外抄』『富家語』における話題の連関/三 『富家語』有職故実的諸条の背景/四 『江談抄』における「場」の問題/五 『江談抄』の小宇宙 第三編 説話集とその周辺 一 『打聞集』断片的記事の研究/二 金沢文庫本『仏教説話集』の説話/三 『水鏡』と説話/四 『宇治拾遺物語』の「序」/五 『三国伝記』の成立基盤/六 『三国伝記』版本の浄土教的特徴/七 『発心集』と『三国伝記』 第四編 史的展望の試み 一 「説話文学を考える/二 古代の説話と説話集/三 説話の生成と伝承/四 中世の説話と説話集/五 説話集の序文/六 説話集の時代/七 「鬼」の悲しみ 第五編 新資料の研究 一 永青文庫蔵『豊後国風土記』について/二 島原松平文庫蔵『古事談抜書』の研究/三 東大寺図書館蔵『三宝聚集抄』について/四 東大寺図書館蔵『釈迦如来釈』(解説・翻刻・関係文献一覧) 書名・地名(含、寺社名)・人名(含、神仏名)索引





 『国語引用構文の研究』 藤田保幸著 本体18,000円
  (研究叢書260)A5・上製函入 680頁 ISBN4-7576-0082-8 日本学術振興会助成図書

 文法の問題として論ぜられる引用表現の研究、すなわち統語的引用の研究は、一、二の先駆的業績や注目すべき研究があったことを別にすれば、実質的には著しく立ち遅れた研究領域であった。本書は、その未開拓の領域全般にわたって、本当の意味ではじめて一貫した、そしてまとまった考察を展開するものである。
 引用された言葉が文の構成要素として組み込まれた統語構造の表現としては、文中引用句「〜ト」によるものが最も典型的で、論ずべき問題・関連してそこから派生してくる問題も多いが、著者は、このような引用句「〜ト」と述語(述部)との相関構造をもつ「引用構文」を主たる考察の対象として、一貫して研究を進め、四十余編の論文を公にして、独自の学説体系を構築してきた。こうした著者の学説体系を整備された形で提示することで、現代日本語の文法研究に相応の貢献をなしたいと考えるものである。

〔内容目次〕序章 導言  第一章 序論 文法論の対象となる「引用」とは何か?/統語的引用とカギカッコ(引用符)の問題/「引用構文」をめぐる前提的観察 第二章 総論 引用表現の原理/引用構文の構造/引用構文と「格」の論/もう一つの「引用」―モノとしてのコトバの引用―/引用構文の解体と再整理/「話法」と「話し手投写」/「話法」と引用構文のシンタクスとの関係 第三章 各論T―引用構文の諸問題 引用構文の整理と概観/引用構文をめぐるケース・スタディ 第四章 各論U―引用研究の諸問題 複合辞と引用/引用と連体修飾/引用の周辺 第五章 結論―本論文の位置―
参考文献/本文で言及した文献・引用関係研究文献目録 索引(事項索引・人名索引) 



2000年12月のページへ  2月のページへ

注文はこちら




Go to Top