新刊案内(02年8月)


 『京都府方言辞典』 中井幸比古著 本体10,000円
  (和泉事典シリーズ12) B5・上製函入 585頁 ISBN4-7576-0166-2

 〈京都府の方言語彙を余すところなく収録し、京都府の方言語彙研究の総まとめとする。〉

 京都府においては、これまで府下の方言語彙を網羅的に収集した方言辞典がなかった。そのため、「これまでに記録された京都府下の方言語彙にはどのようなものがあり、全部でおよそどれくらいの数があるのか」「各語は、どの地域で・いつ・誰によって報告されているのか」といったことを調べる手だてがなかった。
 そこで、著者は、明治以降に刊行された方言集・方言辞典一四七種を集成し、さらに著者自身の調査によって若干の語彙を補足することによって、約二万五千項目からなる本辞典を編纂した。不十分な点もあるが、方言の衰退が著しい現在、多量の新資料が現れる可能性は低く、また、編纂開始後二十年以上が経過していることも考え、ここに公刊する次第である。本辞典は、全項目について出典が明記されており、京都府における、明治以降の方言語彙研究の総まとめとしての役割を果たすものである。県単位の網羅的方言辞典は、近畿地方においては本書が初めてである。

〔内容目次〕はしがき(一、はじめに 二、凡例 三、出典一覧 四、考察 五、アクセントについて)/京都府方言辞典(表音式五十音順)/共通語引き主要俚言索引/付録 京都府言語地図(一七葉)





 『北村透谷 「文学」・恋愛・キリスト教 永渕朋枝著 本体2,800円
  (和泉選書132)  四六・上製 340頁 ISBN4-7576-0168-9


 “他界から現実へ”。「文学」は「我」が現実世界の外に切り拓き構築した観念の世界から逆に現実に関わっていくべきである、という透谷の主張は今日なお有効ではないか。
  本書は、透谷の恋愛論の現代性を妻美那子という視点から問い、島崎藤村への展開を『春』と「情熱」の語誌、『新生』の内なる透谷という視点から論じた第一部、民友社をはじめ当時の資料の精査からキリスト教文化圏に透谷を改めて位置づけ、「硬文学・軟文学」についての文学界・思想界の対立を掘り起こすことから文学史を再検討した第二部、文学者透谷におけるキリスト教の意味を考察し、宗教と文学、現実社会と文学とがいかに関わるかについての透谷の主張の独自性を論じた第三部から成る。終章では近世文学から透谷没後の受容のされ方までを視野に入れて、透谷の提言を総括した。
 美那子の未発表写真・日記の紹介、山路愛山がキリスト教機関誌『護教』誌上に起こした人生相渉論争論文である「十字軍」、「硬文学・軟文学」の初出である竹越三叉の「文話数則」の翻刻紹介を含む。文学、思想、宗教、ジェンダーといった幅広い領域の問題を、未発表資料の渉猟によって論じた力作。

〔内容目次〕
 序章
第一部 透谷の「恋愛」論とそのゆくえ―透谷から藤村へ―
  第一章 「厭世詩家と女性」論―美那子体験の意味―/第二章 藤村に隠された透谷の「情熱」―透谷以前、そして『春』へ―/第三章 『新生』の内なる透谷

第二部 文学史の再検討―透谷と民友社―
  第四章 『護教』による人生相渉論争の再検討/第五章 透谷は「軟文学」を代弁したのか―「硬文学・軟文学」論争―

第三部 「文学」の創造―キリスト教と文学―
  第六章 透谷におけるキリスト教/第七章 透谷、宗教と文学との間―西洋文学受容と関わって―/第八章 透谷における「我」と「他界」―「内部生命論」を中心に―
 終章







『西鶴全作品エッセンス集成』  浮橋康彦編 本体2,000円
  (テキスト)A5・並製 315頁 ISBN4-7576-0155-7


〔内容目次〕
一、好色物
〈一 好色一代男/二 諸艶大鑑(好色二代男)/三 好色五人女―巻三 中段に見る暦屋物語/四 好色一代女/五 男色大鑑(本朝若風俗)/六 西鶴置土産〉   
二、説話物
 〈七 西鶴諸国はなし/八 懐硯〉
三、悪徳物 〈九 本朝二十不孝/一〇 新可笑記/一一 本朝桜陰比事〉
四、武家物 〈一二 武道伝来記/一三 武家義理物語〉
五、町人物 〈一四 日本永代蔵/一五 世間胸算用/一六 西鶴織留〉
六、晩年の諸作 〈一七 西鶴俗つれづれ/一八 万の文反古/一九 西鶴名残の友〉
七、俳諧 
八、西鶴分類略年譜




 『プロレタリア詩人 鈴木泰治 作品と生涯  尾西康充・岡村洋子編 本体2,800円
  (和泉選書134)  四六・上製 265頁 ISBN4-7576-0174-3

◆生誕90周年 記念出版◆

 詩人にとって一冊の詩集を上梓するのがいかに大切なことか、その説明には多言を要しない。戦前の大阪には、詩壇で注目されながら自分の詩集を編む余裕もなく、若くして戦死した詩人がいた。彼の名前は鈴木泰治―日中戦争が勃発して半年後の1938年3月16日、中国山西省の山間部で戦死した。享年26歳。
  戦前の大阪を代表する詩人としてアナーキズムの小野十三郎やマルキシズムの田木繁、大元清二郎などの名前があげられる。ナルプ大阪支部に所属し、雑誌「大阪ノ旗」「関西文学」「啄木研究」「新精神」等に詩や評論を発表していた泰治も、そのなかに加えられるだろう。
 泰治は四日市市室山に生まれ、県立富田中学校に入学。同級生には『肉体の門』の田村泰二郎がいた。大阪外語学校独逸語科在学中に検挙されて退学処分を受ける。
その後、不安定な生活が続く一方、小熊秀雄や新井徹、遠地輝武らと共に雑誌「詩精神」「詩人」等で活躍する。ナルプ解体後の〈敗北の季節〉のなかで、傷ついた心を抱きながらも「僕の讃歌は/プロレタリアのうえに。/それ以外に何があろう」と叫んだ。今年、生誕90周年を記念して、早世の詩人・泰治にとって初の作品集を出版する。

〔内容目次〕
T 鈴木泰治作品集成
  一、詩作品篇 1、「プロレタリア詩」「大阪ノ旗」時代/2、「啄木研究」「詩精神」時代/3、「詩人」時代
  二、小説作品篇/ 三、評論・随想作品篇 
  四、未発表原稿(「魚群」「山にある田で」を含む)篇 1、詩作品/2、小説作品/3、評論・随想作品
U 作品解題 
V (解説)鈴木泰治とその時代 
  一、誕生から富田中学校卒業まで/二、大阪外国語学校入学から検挙退学まで/三、ナルプ大阪支部員から「詩精神」同人まで/四、死に至るまで
W 年譜
X 参考資料
参考文献一覧







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