新刊案内(02年10月)


 『長野隆著作集』 全三巻・完結 長野隆著作集編集委員会編 
   ◎セット価本体12000円◎  A5上製・カバー装(装幀=村上善男)・各巻月報付  

  【急逝した気鋭による原理的探究の集大成】

 四八歳で急逝した稀有な文学研究者の初の著作集。生地福岡から関西を経て津軽に定住した著者が、日本近代の風土と精神性を原理的に探究し、グローバルな観点からその世界文学化に向けて発信した足跡を、全三巻に集成しました。斯界に波紋を投げかけた萩原朔太郎論、中原中也と太宰治を論じた<うた>論と<かたり>論など、近現代を代表する詩人作家を取り上げた論文・評論のほか、エッセイ・随想など全二千枚を収録しています。<詩>の生成と変容の秘密を鋭く抉り深く追究する方法は、すでに<思想>と呼ぶべき構築性をも獲得しています。文字通り<命懸け>の研究態度が滲み出た論考の数々は、<研究>という場を離れてさえ読者の共感を呼ぶでしょう。著者が研究者である以上、学問的評価が前提であることは勿論ですが、文学研究者の論文集成としてのみならず、一人の<文人>が辿った<魂>のドキュメントとしても読まれることを意図して、編集にもいくつかの意匠を凝らしました。(編集者代表 山田兼士


第一巻 「萩原朔太郎論集成」 本体5,000円  339頁・口絵1頁  ISBN 4-7576-0170-0

 第一巻には長野隆のほとんど全ての萩原朔太郎論を集成しました。現象学的存在論と日本文芸学の方法を駆使した〈空間の詩学〉による萩原研究に始まって、身体論・生命論の観点から『月に吠える』の思想と方法を論じた「陰画の原理」、近代日本の精神風土を探究した「『旅上』の風景」に到るまで、一人の詩人の長い道程を走破する試みであるとともに、長野詩学の生成過程を語るドキュメントでもあります。「陰画の原理」以外はすべて単行本未収録論考。

〔内容目次〕
朔太郎『月に吠える』の象徴の構造 ―作品『猫』を視座に据えて―/朔太郎の詩のイメージにおける〈実在〉と〈非在〉 ―〈椅子〉〈家〉の象徴―/萩原朔太郎の象徴詩  ―被象徴内容としての「実存」と「永遠」―/萩原朔太郎の詩の美的範疇 ―その「実存的なるもの」について―/朔太郎の詩の象徴様式に関する一視点 ―形象の可視性について、「およぐひと」「月光と海月」を視座に―/萩原朔太郎・陰画の原理/砂子屋書房『萩原朔太郎の世界』編者あとがき/「旅上」の風景 ―萩原朔太郎の〈近代〉―

解題    阿毛久芳
あとがき  山田兼士

〔月報1・内容目次〕
「開け胡麻!」という呪文       安藤 宏(東京大学助教授)
短かった夏の記憶―長野隆氏追想―  野口武彦(文芸評論家)
長野隆氏追悼              野山嘉正(放送大学教授)
長野隆氏の文学と「ふるさと」     畑 有三(専修大学教授)
深夜の電話                村上善男(美術家)

 第二巻 「歌論・詩論・物語論」 本体4,000円  237頁・口絵1頁  ISBN 4-7576-0171-9

 第二巻には萩原朔太郎論以外の研究・評論を網羅しました。中世和歌を論じた〈歌論〉と芥川龍之介、島尾敏雄、太宰治等を論じた〈物語論〉の間にある、もっとも多い論考が〈詩論〉です。西脇順三郎論、宮沢賢治論など、すべて単行本未収録作品。特に、太宰治を地元・津軽に腰を据えて凝視した晩年のエッセイの数々は多くの示唆に富み、今後の太宰論の行方を指し示しています。〈うた〉と〈かたり〉を結ぶ思想としての長野〈詩論〉が一望できる一冊。

〔内容目次〕
一 歌論
 「妖艶」の構造と其の近代的可能性 ―「妖艶」と、朔太郎の「艶の形而上学」―/定家「拉鬼体」の本質/定家「拉鬼体」の考察 ―拉鬼体十二首を中心にして―

二 詩論 西脇順三郎の方法/宮沢賢治の方法 ―『春と修羅』を軸に―/近代詩研究瞥見 ―宮沢賢治研究の流行―/中原中也「含羞」 ―在りし日の歌―/中原中也「一つのメルヘン」/中原中也『山羊の歌』解説・鑑賞/樋口覚著『富永太郎』/朔太郎研究―坪井秀人著『萩原朔太郎論』をめぐって―/『ふしぎな鏡の店』と清岡卓行/吉本隆明の『記号の森の伝説歌』/明快な形像 ―大岡信『日本の詩歌 その骨組みと素肌』『オペラ 火の遺言』―/『於母影』鑑賞/森鴎外の詩鑑賞/『海潮音』三篇 ―「落葉」「山のあなた」「春の朝」―

三 物語論 島尾敏雄「死の棘」/沈黙した諷喩 ―小川国夫―/芥川龍之介『藪の中』について ―比喩としての〈文学〉―/太宰治『津軽』論/死を賭けた“言葉”の虚構/〈かたり〉をめぐる太宰治論、等々/太宰治における外国文学/『津軽』(つがる)/『庭』(にわ)/太宰治警句解説

解題    阿毛久芳
あとがき  山田兼士

〔月報2・内容目次〕
『抒情の方法』のことなど 勝原晴希(駒澤大学教授)
私的な回想         北川 透(梅光学院大学教授)
長野隆さんのこと      鈴木貞美(国際日本文化研究センター教授)
感無量と感謝        萩原葉子(小説家)
長野隆論 うたとかたり  藤井貞和(東京大学教養学部教授)


 第三巻 「エッセイ他」 本体3,000円  189頁・口絵1頁  ISBN 4-7576-0172-7

 第三巻には長野隆が生前に発表したエッセイ、記事、書評、講演録等をほぼ執筆順に収録しました。約二十年にわたる思想形成と展開の歩みが一望できるようになっています。〈批評精神〉の真摯さがもたらす緊張感と、磊落かつ繊細な〈自己表現〉がもたらす快楽が、随所に漲った短文の集成です。初めて長野隆の「思想と方法」に出会う読者にとってもまた、文学営為本来の「命懸けの遊び」を体験するための絶好の入門書となるでしょう。

〔内容目次〕
形象と喩(一)/形象と喩(二)/テクノイド ―椅子―/「ドゥエンデ」と「いき」/ズラしてみよう・「構造と力」 ―付録・チャート式「『構造と力』の力」―/同人誌の楽しみ/『現代文学』によせて/北方圏風景/太宰治に何を視るか ―饗庭孝男氏講演に期待するもの―/岸本浩の死/ウィリアム・バンディ ―ヴァンダービルト大学/ボードレール・センター―海外だより 報告/〈詩語〉の解析 意志/菅谷規矩雄のこと/青森市『津軽の野づら』(深田久弥/北畠八穂)/太宰治 ―その〈かたり〉の行き着くところ―/全集読んだK君の事/十和田湖「十和田湖の裸像に与ふ」(高村光太郎)/留学生と国際交流/あおもり文化時評「郷土」取り巻く「近代」照射―県近代文学館、いよいよ22日開館―/村上善男論/編集後記(「詩論」終刊号)みちのく文学の風景 太宰治と津軽/“陰画”を見る眼/実験的工房の存在感 ―第22回音楽展を聴いて―/『萩原葉子』編 解説/太宰治記念館開設にともなう「太宰治研究会」設立の夢/太宰治に学ぶ私小説の書き方/追悼・跋文―坂東建雄のこと/中東の日本研究拠点・カイロ大学/壁越えて「現代」語る ―日韓文学シンポを終えて―/日韓文学シンポジウムを終えて ―《現代詩の実験》と藤井貞和―/支部だより

解題    野村 聡
年譜    長野和子
あとがき  山田兼士

〔月報3・内容目次〕
「義」と「寂寥」のひと  饗庭孝男(文芸評論家/青山学院大学名誉教授)
ナイルに入る       川村 湊(文芸評論家)
金木の一夜       東郷克美(早稲田大学教授)
長野隆さんの眼     山田有策(東京学芸大学教授)
喪失            阿毛久芳(都留文科大学教授)




 『京都女子大学図書館蔵 風雅和歌集』 千古利恵子編 本体4,000円
  (和泉古典文庫9) A5・並製 360頁 ISBN4-7576-0176-X  

 京極派歌人の庶機した感覚的写実の世界は、南北朝動乱期、北朝の光厳院が風雅和歌集を撰集したことによって完成したといってもよい。そういう点からも風雅和歌集の研究は京極派歌人の研究には不可欠というものの、まだ充分とはいえない。なかでも伝本の研究については現存する伝本数も正確には把握しがたく、確認されている伝本の研究についてさえもその本文が全て紹介されているわけではない。現存する風雅和歌集の本文を一本なりとも紹介したいとの思いから、本書では京都女子大学図書館蔵本を翻刻した。京都女子大学図書館蔵本は精撰本系伝本の中でも、殊にすぐれた本文を有するといわれる伝本である。本書では研究の便をはかるために、頭注には京都女子大学図書館蔵本の本文と新編国歌大観本・佛教大学附属図書館蔵本・玉里文庫蔵本の各本文とを校合しその校異を、巻末には解説と初句索引を付した。

〔内容目次〕凡例 風雅和歌集/序/巻第一 春歌上/巻第二 春歌中/巻第三 春歌下/巻第四 夏歌/巻第五 秋歌上/巻第六 秋歌中/巻第七 秋歌下/巻第八 冬歌/巻第九 旅歌/巻第十 恋歌一/巻第十一 恋歌二/巻第十二 恋歌三/巻第十三 恋歌四/巻第十四 恋歌五/巻第十五 雑歌上/巻第十六 雑歌中/巻第十七 雑歌下/巻第十八 釈教歌/巻第十九 神祇歌/巻第二十 賀歌/解説/和歌索引




 『関西大学図書館蔵 俊秘抄』 俊頼髄脳研究会編  本体1,800円
  (和泉古典文庫10)  A5・並製 168頁 ISBN4-7576-0177-8

 関西大学図書館所蔵の『俊秘抄』乾・坤二冊は、国会図書館蔵本(影印叢刊92)などと比べて、対立する本文が認められ、これらの異文は「俊頼髄脳」の読解において大いに注意すべきであろう。なかでも本書は、明暦二年校合の奥書をもっており、それ以前の本文を伝えるとすると同系統における最も古い書写年代となり、その基準となるべき善本のひとつと言える。さらに加納諸平や伴林光平とも交流のあった河内国花園の国学者岩崎美隆の旧蔵本であり、別本との校合も、天保九年に美隆の手によって朱書されている。また他系統に比べ、広く伝播したことを思うとき、歌学書の享受の問題を考える意味でも価値ある一書と言える。本書の翻刻本文と解説、巻末に校訂一覧と和歌二句索引を掲載し、便宜を図った。

〔内容目次〕
 凡例/翻刻 俊秘抄(上・下)/解題/校訂一覧/和歌二句索引







『現代日本語の文法 T』   本体1,500円
  (IZUMI BOOKS 7) 四六・並製 153頁 ISBN4-7576-0179-4


 「わたしは日本人です」と言うのと、「わたしは日本人なのです」と言うのでは、どのような違いがあるだろうか。「あなたは日本人ですか?」と「あなたは日本人なのですか?」では、どう違うのだろうか。
 日本人は、ふだんの会話で、「のです」という言い方を無意識のうちにたびたび使っている。しかし、「のです」の正体は何かということになると、なかなか容易には答えられない。本書は、「のです」をはじめとして、「のですか」「のでしょう」「のですから」「のではありません」などの言い方について、その意味と用法を分かりやすく解きあかしたものである。
 「のです」は日本語の表現法、日本人の思考法を奥深いところで支配しており、「のです」の問題は日本語の文法全体の問題であると言っても過言ではない。本書でも、「のです」を主題としながら、疑問・推量・否定・仮定・終助詞・文体といった文法の諸問題にも話が及んでいる。日本語教師・日本語研究者にとって必読の一書と言えよう。

〔内容目次〕

第1章 はじめに


第2章 「のダ」の働き 1 「のダ」の基本的な意味・機能/2 「のダ」の意味特性・使用条件 

第3章 「のだ」 1 従来の記述の問題点/2 「のだ」の用法/3 「のだ」が用いられない場合/4 披瀝性の含み/5 「のだ」と「からだ」/6 既定性の含み/7 特立性の含み/8 発言の根拠を述べるときの含み 

第4章 「のか」 1 「のか」の意味/2 「のか」が用いられない場合/3 披瀝性の含み/4 「のか」と「からか」/5 特立性の含み/6 感情的な含み/7 話し手の予想 

第5章 「のだろう」 1 「だろう」の三種類の用法/2 「のだろう」の意味/3 披瀝性の含み/4 「のだろう」と「からだろう」/5 特立性の含み/6 特殊な「だろう」 

第6章 「のではない」 1 「のではない」の意味/2 特立性の含み/3 βの条件/4 「のではない」と「からではない」/5 禁止の「のではない」 

第7章 「のなら」 1 「のなら」の意味/2 状況設定の「なら」の場合/3 実情仮定の「なら」の場合/4 「のであれば」「のだったら」 

第8章 「のだから」 1 「のだから」の意味/2 前件の性格/3 後件の種類/4 発言の主眼/5 後件が命令などのときの含み/6 後件の省略/7 「のだし」「のだもの」 

第9章 「のだった」 1 表現の視点の特殊性/2 反復や習慣の含み/3 特殊な「た」の場合 

第10章 補足的な要因 1 述語の種類と「のダ」/2 文内での位置と「のダ」/3 推定の「のではないか」/4 形容詞述語文における「のです」 

第11章 定義をめぐる問題 1 文末の「の」/2 「ので」 

補説A 終助詞 
補説B 疑問文の形式 
補説C 否定疑問文の類型 
補説D 「のダ」の研究史(付 文献目録)






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