新刊案内(02年9月)


 『日本近現代文学の展開 志向と倫理 槇林滉二著作集3 本体8,000円  
   A5・上製函入 383頁 ISBN4-7576-0167-0

  【全三巻完結・セット価本体26,000円】

 文学とは何か、なぜ書くのか、その解は、なぜ読むのかに通底する。著者は諸考あれど、大略、二つをその解に策定している。一つは内なる心意、内なる志の表白であり、今一つは生の理とは何か、いかに生きるかといった倫理の追求と開示である。本書は、日本近現代文学の中から、その寸景を探捜した論稿群よりなる。心に志と倫とがあり、それを開示するに人々は様々なる途と規とを求めた。
 全二部よりなり、第一部は「近現代文学提要」と題して、明治大正昭和そして現代に至る志と倫との追求試行を、夏目漱石、倉田百三、広津和郎、中島敦、佐々木基一、梅崎春生、火野葦平、小島信夫らに求めて点綴した。第二部は井伏鱒二に焦点を絞り、その鬱憂とその放下の姿を、鱒二文学の初、中、後期に追った。井伏鱒二の文学に日本近現代文学の一つの原系脈を徴するが故である。
 一、二部は日本近現代文学のいわば、横軸・縦軸としてあり、よってその全瞰望を試した。

〔内容目次〕
第一部 近・現代文学提要 
第一章 二つの文学原景―夏目漱石恣考―
 「草枕」小考/「行人」の構造 
第二章 大正教養主義の一系流 倉田百三と西田幾多郎/初期の広津和郎 
第三章 昭和文学の光芒― 一つの倫理―/中島敦の世界/「弟子」の構想 
第四章 戦後の方略―戦争の傷痕― 戦後文学と佐々木基一/梅崎春生の世界/梅崎春生「桜島」/火野葦平・その一側面 
第五章 戦後文学以降―新しき倫理をもとめて― 小島信夫の方法/「天平の甍」の構造/「夜と霧の隅で」の構図 
第六章 文学と地方 広島の文学/佐賀と文学/近代文学に現れた全国方言 

第二部 井伏鱒二の文学 
第一章 初期の井伏鱒二―屈託する心― 「山椒魚」考/初期の井伏鱒二 
第二章 中期の井伏鱒二―非日常と日常― 隆替する二つの世界/『お島の存念書』考
第三章 後期の井伏鱒二―放下と固執― 後期の井伏鱒二/「鞆ノ津茶会記」

▼槇林滉二著作集・既刊
 1 北村透谷研究―絶対と相対との抗抵   本体9000円
 2 明治初期文学の展開―後退戦の経絡  本体9000円







 『王朝文学論考』 西木忠一著 本体8,000円
  (研究叢書284) A5・上製函入 325頁 ISBN4-7576-0166-2  


 それぞれの願いを胸に、諸社寺詣でを決行し、おのが身の不運を嘆き訴えることで、日々のより平安な生活をひたすら求めて祈願した王朝女流日記の作者達。その中から『蜻蛉日記』と『更級日記』をとりあげて、彼女達が旅の途上において見聞するに至った自然や風土などを考察した日記文学の諸論考。そこには悲嘆の中にあっていささかの光明を求め続けて生き抜こうとする、王朝女性達の生きざまがありありと見えて来る。『小野篁集』『篁日記』との呼称も見える『篁物語』を次に続けて、歴史と密に関わりつつ考察。とりわけ第一話を柱にしていて、異母妹と「篁」との純なる愛の交渉のあとが浮かびあがる。また、平安文学の巨峰ともいわれる『源氏物語』の、中でも特に第二部における中心人物である、「柏木」「夕霧」「女三の宮」などの人物論を軸とした論考が続く。紫の上の病臥・女三の宮と柏木との密通・女三の宮の出家・柏木の死・紫の上の死と続く第二部は、極めて暗黒の世界である。その中にあって、光源氏がいかに堪え・生き・晩年を迎えたかなどについても考察。

〔内容目次〕
一 蜻蛉日記

  女親といふ人あるかぎりは/稲荷詣で/いまは志賀の麓になむ/「心安し」考  
二 更級日記
  稲荷といふ山まであらはに/石山詣で/秋ごろ和泉に下るに/四つの死別をめぐって  
三 篁物語
  さてこの女、願ありて/その涙を硯の水にて/(付)篁物語私注 (一)かしは車作りて/(二)泣き流す涙の上にありしにも
四 源氏物語
  花散里私論/住吉詣で(一)(二)/僧都密奏/あふさかの関やいかなる/篝火にたちそふ恋の煙/さかさまに行かぬ年月よ/皆人の背きゆく世を/生かされる日から生きる日へ/小野の秋/死と葬送






『森鴎外研究9』  谷沢永一・山ア國紀編 本体4,500円
  (定期刊行物)A5・上製 214頁 ISBN4-7576-0169-7


【気鋭の研究者による深く多彩な森鴎外論】

日本近代文学研究の重鎮、紅野敏郎氏を招いた鼎談「鴎外研究史及び鴎外のあれこれ」では、谷沢永一、山ア國紀氏両氏と共に鴎外の研究史をとりまく様々な世界を丹念に掘り起こす、また、「『鴎外全集』第三十五巻 日記索引(人名篇)」(青田寿美)は、網羅的な索引としては初めての試みで、鴎外の作品や事績を辿る上で貴重な資料となろう。

〔内容目次〕
《鼎談》
鴎外研究史及び鴎外のあれこれ  紅野敏郎・谷沢永一・山ア國紀
《論文》
鴎外・明治四一年三月一七日―上田敏宛書簡から―  宗像和重/〈心〉は理るものにあらず、調ぶるものなり―〈「Casuistica」〉化する〈Casus〉―  新保邦寛/『鴎外全集』第三十五巻 日記索引(人名篇)  青田寿美
『鴎外全集の誕生』―与謝野寛と森潤三郎―  森富・阿部武彦・渡辺善雄/鴎外史にみる明治四十年代  山ア國紀
《方眼圖》 本文の謎―鴎外のしたたかさ― 竹盛天雄/「みなわ集のことなど」  吉村博任/鴎外と馬賊  松井利彦/大正五年の漱石と鴎外  佐藤泰正
《資料紹介》軍人森林太郎  谷沢永一

 ▼既刊
 森鴎外研究1  谷沢永一・山ア國紀編  本体2000円
 森鴎外研究2  谷沢永一・山ア國紀編  本体2000円
 森鴎外研究3  谷沢永一・山ア國紀編  本体2000円
 森鴎外研究4  谷沢永一・山ア國紀編  本体2000円
 森鴎外研究5  谷沢永一・山ア國紀編  本体2000円
 森鴎外研究6  谷沢永一・山ア國紀編  本体2913円
 森鴎外研究7  谷沢永一・山ア國紀編  本体4500円
 森鴎外研究8  谷沢永一・山ア國紀編  本体5000円








 『石橋秀野の世界』  西田もとつぐ著 本体2,500円
  (和泉選書133)  四六・上製 370頁 ISBN4-7576-0173-5

◆夭折の女流俳人、石橋秀野の初の評伝◆

 石橋秀野は俳句を高浜虚子や石田波郷に学び、散文の師横光利一から「短歌に斎藤文、俳句に石橋秀野あり」と賞賛された。太陽の輝きを発するという激しい気迫をこめて戦中、戦後の苦しい流離の生活のなかに、我が子、夫(評論家故山本健吉)への愛と迫り来る死を凄絶な句に詠み、1947年38歳の生涯を閉じた。永年、秀野研究に関わってきた著者が、激動の時代のなかの秀野の生涯を辿りながら、古典的な句形にこめられた彼女の近代的な俳句性を追求した評伝である。奈良県天理市に生まれ東京の文化学院に学び、美貌と気負いと才気は生前に多くの俳人から愛されたが、没後、遺句文集『桜濃く』が残された以後は一部の俳人以外には語られることが少なく埋没していた。詳しい年表、参考文献解題に加え、句の優れた音韻性を生かした作曲家上明子による歌曲集「石橋秀野の俳句によるソプラノとピアノのための『桜濃く』」の楽譜の一部を掲載している。

〔内容目次〕
第一章 まほろばの大和  大和の曼珠沙華/大和国中/少女時代/父、楢太郎/藪家の四姉妹/流転の始まり  

第二章 文化学院時代  駿河台界隈/西村伊作/文化学院の創設/文化学院の教育/虚子と晶子/虚子の俳句講義/卒業記念誌「こく里こ」/中国人詩人黄瀛/秀野の「ホトトギス」参加/山本健吉との出会い  

第三章 愛吟時代   愛吟句会/平穏な生活/石橋夫妻検挙される/田中千禾夫澄江夫妻 

第四章 横光利一と十日会  十日会入門/俳句と散文/三鬼と秀野/「鶴」入会/安見誕生/東京炎上 

第五章  流離 波郷の出征/山陰疎開/玉造温泉臨済宗静巌寺 /島根新聞初音館/県庁焼き討ち事件/秀野と斎藤史/山陰「鶴」の句友たち/末次雨城高麗庵/「鶴」」復刊/「みづうみ」俳句会/秀野の虚子批判/鰻丼に賭ける/山陰留別 

第六章  京都鳴滝、西木屋町 御室川の畔/「風」創刊/三鬼の訪問/日吉館句会/西木屋町松原通上ル/姪姉妹の入洛/新井石毛博士の診察/「衢」俳句会/波郷の入洛/宇多野療養所/友二への訃報 

第七章  秀野没後  秀野追悼句会「くれなゐの座布団……」/一周忌追悼句会/第一回川端茅舎賞受賞/山陰の秀野句碑/『桜濃く』と出会う/秀野五十回忌/藪家の墓―鎌倉円覚寺松嶺院/楢太郎の流離  

終章  八女の秀野 ついの奥つ城/無量寿院納骨/秀野再生/健吉の沈黙/奈良朝美人  

付章  秀野俳句の特性 蕪村の色彩と秀野/与謝野晶子と蕪村/文化学院の絵画教育/蕪村の色世界と秀野/「元始、女性は太陽であつた」/杉田久女と秀野/楽しい家庭設計/『桜濃く』の句形/働きものの俳句/現代女流俳句史の秀野/「鶴」の連衆/秀野の戦争俳句 

〈補注〉 石橋秀野をめぐる人々

流離抄  句・石橋秀野 抄出・山本健吉 

付録  (1)参考文献書誌・解題/(2)石橋秀野略年表/(3)楢太郎・秀野転居先一覧 

歌曲「桜濃く」をめぐって 上明子 石橋秀野の俳句によるソプラノとピアノのための「桜濃く」/作曲を終えて

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