新刊案内(03年10月)


 『河海抄』の『源氏物語』〈第6回 紫式部学術賞受賞〉

 吉森佳奈子著 本体8,500円

  (研究叢書301) A5・上製・函入 295頁 ISBN4-7576-0224-3

    ◆◆

 本書は、『河海抄』が成り立たせた『源氏物語』とそのゆくえについての考察である。
 『源氏物語』について、近代的な読みの制度(わたしたちにとっての『源氏物語』)をいったん括弧に入れ、『河海抄』がどのような知のうちに『源氏物語』を成り立たせていたかを明らかにする。
 『河海抄』は、さまざまな史実や文献を挙げているだけのようにも見えるが、その例の列挙によって、『源氏物語』にいわば息を吹きこむ。それを、「注釈史」、「享受史」と言うのは正しくないであろう。『河海抄』の『源氏物語』と言うべきであり、それを見届けることから、それぞれの時代にそれぞれの意味をもってあった『源氏物語』(更新されてゆく『源氏物語』)として見ることに導かれる。そこから、それとは異なるものとしてある近代以降の、わたしたちにとっての『源氏物語』を問うことにもなる。
 本書は、『河海抄』の知のありようを当時の文脈にそくして照らし出すことによって、テキストの受容、流布、また、歴史意識等をめぐる従来の通念を再検討しつつ、『河海抄』の『源氏物語』をあらわしだすことを試みたものである。 

〔内容目次〕
凡例/はじめに 
第一部 『源氏物語』と史実
 第一章 『河海抄』の『源氏物語』/第二章 『河海抄』の光源氏 
第二部 「日本紀」の問題
 第三章 『河海抄』の「日本紀」/第四章 『源氏物語』と「日本紀」/第五章 「日本紀」による和語注釈の方法 
第三部 『河海抄』における漢籍の引用と説話の空間への広がり 
 第六章 『河海抄』の「毛詩」/第七章 「笛の音にも古ごとは伝はるものなり」考/第八章 『河海抄』と説話 
第四部 『河海抄』以後 
 第九章 『千鳥抄』の位置  
おわりに   

 


 『中世和歌文学諸相』
 上條彰次著 本体13,000円

  (研究叢書305) A5・上製・函入 547頁 ISBN4-7576-0231-6

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 本書の書名は、「研究対象として長年考察して来た誹諧歌が、いわば普通の正統的な和歌に対して、異端的性格を有しているともいえるのではないかと考えられることや、『とはずがたり』の中の和歌関連問題をめぐる考察をも含むということなど、和歌の多様なありようを取り上げている内容に配慮して」(「あとがき」より)の名称である。
 「異端的性格を帯びる誹諧歌の考察が、正統的和歌のあるべき本性をなお深く探究するために、逆照射の役割を果たしてくれる」(同右)という、発展的応用的な読みが期待される。
 
〔内容目次〕
第一篇 藤原俊成考説 
  序 藤原俊成の和歌と歌論/第一章 藤原俊成の生涯/第二章 藤原俊成・定家の歌論/第三章 『千載集』への道/第四章 「藤原俊成筆自撰家集切」考/第五章 「藤原俊成筆自撰家集切」考補説/〈付説〉 「源通具・俊成卿女五十番歌合」について 
第二篇 新古今時代歌人考説
 第一章 定家と西行―その一断面―/第二章 後鳥羽院「遠島百首」の一首―一類本・二類本の先後関係に及ぶ―/第三章 『百人一首』追考―『明月記』関連記事の周辺など―/第四章 『百人一首』の性格一面 
第三篇 女流作品考説
 第一章 『建礼門院右京大夫集』補説/第二章 『とはずがたり』の一遠景/第三章 後深草院二条の生活断面/第四章 後深草院二条の和歌二首私考 
第四篇 誹諧歌考説
 第一章 誹諧歌の変貌/第二章 誹諧歌補説/第三章 『古今集』誹諧歌試論―俊頼・基俊をめぐって―/〈付説〉『金葉集』入集基俊歌考―その撰定理由について―/第四章 誹諧歌史断面―『後葉集』をめぐって―/第五章 誹諧歌史断面―『新続古今集』をめぐって― 
あとがき(含初出一覧)
 

 


 『今昔物語集の表現形成』〈第32回 金田一京助博士記念賞受賞〉
 藤井俊博著 本体9,000円

  (研究叢書306) A5・上製・函入 367頁 ISBN4-7576-0234-0

 『今昔物語集』の表現に多大な影響を与えた『法華験記』との関わりを国語学的な見地から徹底的に明らかにする。まず第一章では、「奇異シ」「微妙シ」のような用字法、複合動詞や漢語サ変動詞などの語彙、「籠リ居ル」「夢覚ヌ」のような頻出表現、「一分」「微塵」などの漢語語彙等が『法華験記』に源を持つことを指摘。特に漢籍語を用いる『法華験記』の特徴が『今昔物語集』に受け継がれていることを述べる。第二章では、『今昔物語集』の「更ニ〜無シ」「事無限シ」などの特徴的な表現が『法華験記』においても同様に特徴的なものであることを指摘。その表現は、否定強調表現・強調表現・否定表現・描出表現・死亡表現・生存表現など説話を特徴づけるものである。第三章では、語り手の視点が物語の現場に置かれる点に『今昔物語集』の特徴があることを指摘し、「非けり」叙述が連続的に導入される点が「今は昔」で始まる説話の特徴であることを指摘する。

〔内容目次〕
序章 今昔物語集の表現研究
 一 今昔物語集の概要と従来の研究/二 出典・類話の問題点/三 本書の目的と方法 
第一章 今昔物語集の表記・語彙の形成
 一 今昔物語集の出典と表記法/二 今昔物語集の複合動詞/三 今昔物語集の複合動詞/四 法華験記の常套語句と今昔物語集/五 法華験記の用字・用語と今昔物語集 
第二章 今昔物語集の表現の形成
 一 今昔物語集の否定強調表現/二 今昔物語集の強調表現/三 今昔物語集の描出表現/四 今昔物語集の否定表現/五 今昔物語集の死亡表現/六 今昔物語集の生存表現 
第三章 今昔物語集の叙述と視点
 一 冒頭句「今は昔」と「けり」叙述/二 冒頭句「今は昔」と「けり」叙述/三 今昔物語集の「けり」叙述/四 物語文の表現と視点 
結章
初出一覧/索引(主要語句・人名・事項)あとがき
 

 





 『柿本人麿異聞』
 片桐洋一著 本体2,500円

  (和泉選書138) 四六・上製 248頁 ISBN4-7576-0226-X

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『伊勢物語』『古今和歌集』など、平安時代の文学の後代における注釈史・享受史の研究を開拓してきた著者が、『萬葉集』の大歌人柿本人麻呂の平安時代から鎌倉・室町・江戸時代における享受の実相を明らかにした力作。
 平安時代以降、日本人の心に生き続けて来た人麻呂のすがたを照射するとともに、そのような伝承の人麻呂像は、実はすでに『萬葉集』の中にも見られると喝破している。随所に示される新資料と新解釈は、読者を魅了してやまない。 

〔内容目次〕
 プロローグ ―なぜ『柿本人麿異聞』か
 第一章 『古今集』の人麿

  まず「人麿・赤人同一人説」について/『和歌深秘抄』と『人丸秘密抄』他
 第二章 柿本人麿とならの帝
  人麿の時代の天皇/『古今集』の仮名序が言う『萬葉集』他
 第三章 藤原公任時代の人麿享受
  『古今集』の古注と左注は公任時代の付加/藤原公任の人麿歌享受 他
 第四章 『人麿集』の生成
 第五章 柿本大夫と猿丸大夫
  猿丸大夫とは何者? 他
 第六章 神になった柿本人麿
  人麿影供和歌について/人麿影についての伝承 他
 第七章 伝授の場における歌神人麿
  秘歌となった「ほのぼのと」の歌/人麿は女性だったという話 他
 第八章 江戸時代の人麿ブーム
  『人丸秘密抄』再説/大典禅師の『柿本人丸事跡考』他
 第九章 伝承の人麿は『萬葉集』から
 エピローグ 
 



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