新刊案内(03年9月)


 『近代文学と熊本―水脈の広がり―
 首藤基澄著 本体2,500円

  (和泉選書139) 四六・上製 319頁 ISBN4-7576-0229-4

 漱石は、「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より……」「日本より頭の中の方が広いでせう」(『三四郎』)と書いている。熊本の文学を一地域に囲い込むのではなく、全国に向かって解き放てばどうなるか。水脈の広がりを見定める著者独特の、熊本を起点にした日本近代文学の考察を通して、ここに新たな視点を提起する。
 まず小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の作品を、英語で書かれた日本文学として取りこみ、明治を複眼で捉える。漱石では、連想法による俳句に近代俳句の今一つの源流をつきとめ、『こゝろ』の先生の、大切なことを逸らしそらしする「仕方がない」心の問題に解き及ぶ。そして、木下順二「夕鶴」の愛の構造、林房雄や上林暁の出発期の問題、女流俳人中村汀女の世界を浮かび上がらせ、北原白秋、木下杢太郎等の「五足の靴」の流れをたどり、芥川龍之介、堀辰雄、遠藤周作、福永武彦、堀田善衛、小川国夫の文学に迫る。

〔内容目次〕
第一章 小泉八雲―人生の考察― 第二章 徳冨蘆花/第三章 夏目漱石 子規と漱石―写生と連想―/「草枕」への視角/『こころ』私解―「仕方がない」先生の心― 第四章 森鴎外「阿部一族」 第五章 林房雄―近代の溶鉱炉― 第六章 上林暁 第七章 徳永直の転向小説―弱者の視座の意味― 第八章 中村汀女 生活者のうた/汀女の戦後/汀女の位置 第九章 木下順二「夕鶴」論 第十章 耕治人―凡にして非凡― 第十一章 光岡明 「いづくの蟹」/光岡明の変貌―傑作「行ったり来たり」 第十二章 「五足の靴」と近代文学 若い詩人たちの旅/キリシタン文学(北原白秋/木下杢太郎/芥川龍之介/遠藤周作/金子光晴)/水の構図(北原白秋/芥川龍之介/堀辰雄/福永武彦)/乱…(堀田善衛/木下杢太郎)/天草の現在(小川国夫) 後記 




 『論攷中島敦』
 木村瑞夫著 本体1,800円

  (和泉選書140) 四六・上製・函入 208頁 口絵1頁 ISBN4-7576-0232-4

〔内容目次〕
木村瑞夫さんのこと 田辺祐成/志賀直哉と中島敦―その自我について―/『古譚』六篇説再考/中島敦『古譚』論―その連続性について―/中島敦『古譚・古俗』論―統一性と分割性に関する考察―/中島敦『山月記』論―李徴にとっての〈神〉―/中島敦『李陵』論―行為と救済―/中島敦『名人伝』論―精神と形―/《研究動向》中島敦/《国語教育》中島敦『山月記』の指導―作品群『古譚』中の一篇としての観点より―/初出一覧/あとがきに代えて
    




 『『新撰万葉集』諸本と研究』
 浅見徹監修 乾善彦・谷本玲大編 本体9,000円

  (研究叢書300) A5・上製・函入 343頁 ISBN4-7576-0223-5

 新撰万葉集は、種々の意味で、万葉集と王朝和歌の接点に立つものである。正訓字主体表記の和歌に七言四句の漢詩を添えたその形式は、当時の日本文芸の状況を物語る。諸本は、大きく流布本系と原撰本系とにわかれ、流布本系は、さらに羅山本系、京大本系、版本系の三つのグループが考えられている。本書は、その諸本のうち、今まで影印のなかった羅山系の中から林羅山旧蔵本(内閣文庫蔵)と、契沖の校訂にかかる元禄九年版本(浅見徹蔵)の二本を影印に付し、さらに、両本の解説、文献目録と浅見徹による諸本研究とを加える。新撰万葉集研究の一助となるのみならず、元禄九年版の影印は契沖研究にも資するところが大きい。

〔内容目次〕
凡例 緒言 影印篇(一、羅山本〈内閣文庫蔵〉/二、元禄九年版〈浅見徹蔵〉) 新撰万葉集の諸伝本(諸本相互関係の概括/版本に関して/京大本系諸本/講談所本と藤波本/八雲軒本系統の諸本/原撰本系統) 影印解説(一、羅山本/二、元禄九年版) 研究文献目録 後記

既刊
 新撰万葉集総索引 増田繁夫監修・杜鳳剛編 
  (索引叢書35)13、000円




 『近畿西部方言の生活語学的研究』
 神部宏泰著 本体11,000円

  (研究叢書302) A5・上製・函入 423頁 口絵1頁 ISBN4-7576-0225-1

 近畿西部(主として兵庫県)地域の方言表現を対象に、その方言生活者の視点に立って生活語学的研究を行ったのが本書である。特定地域に存立する方言は地域性によって、換言すれば地域に生きる人と生活によって性格づけられている。言うまでもなく、その人も生活も史的事態に他ならない。よって現実の方言表現の世界を問題にするにあたっても、史的観点を重視するのが本研究の立場である。この立場は、方言を、単に他との形式の違いや変相の特殊性に関心を示すだけでなく、拠って立つ人と生活の視点から取りあげ、表現と表現活動の内面に迫ることを重要な目標とする。この目標に沿って、本書は「文末表現法」「敬語表現法」「断定表現法」「接続表現法」「婉曲・間接表現法」「特殊表現法」「生活語の世界」「方言の表現と特性」の八章を立てている。当該地域の生活語の生きた表現の機微と、その史的背景とを問題にするのに有効な視座であろう。

〔内容目次〕
第一章 特定文末詞の表現法/第一節 播磨・但馬方言のナ行音文末詞―その生態と特性―/一、「ナ」文末詞の用法と機能/二、「ノ」文末詞の用法と機能/三、「ネ」文末詞の用法と機能/四、ナ行音文末詞総括/第二節 播磨・但馬方言のヤ行音文末詞―その生態と特性―/一、「ヤ」文末詞の用法と機能/二、「ヨ」文末詞の用法と機能/三、「エ」文末詞の用法と機能/四、ヤ行音文末詞総括/第二章 敬語表現法/第一節 兵庫丹波域方言の尊敬法/一、「ナハル」類尊敬法/二、「動詞連用形+て+断定助動詞」尊敬法/三、兵庫丹波方言の尊敬法収束/第二節 播磨・備前国境域方言の尊敬法/一、寒河方言の尊敬法/二、福浦方言の尊敬法/三、命令形式の存立と運用/四、命令形式の史的推移と特性/第三節 動詞連用形を用いる尊敬法―播摂北部域方言における特殊尊敬法の生態―/一、動詞連用形尊敬法とその担い手/二、動詞連用形尊敬法の分布と生態/三、動詞連用形尊敬法の成立と推移/四、「て」尊敬法とのかかわり/第四節 東播磨方言の丁寧法/一、丁寧助動詞「ダス」の存立状態/二、丁寧助動詞「デス」の存立状態/三、丁寧助動詞「マス」の存立状態/四、丁寧動詞/第三章 断定表現法/第一節 播磨・但馬方言の断定法―その史的推移と表現性―/一、断定法形式の分布状況/二、「ダ」の存立状態/三、「ジャ」「ヤ」の存立状態/四、衰退形式と新生形式の表現性/五、断定法形式の史的展開/第二節 播磨・備前国境域方言の断定法/一、国境東部―播磨北西部域方言の断定法/二、国境東部―播磨西部域方言の断定法/三、国境西部―備前東部域方言の断定法/四、国境域方言の断定法/五、断定法の史的系脈/第三節 播磨方言における断定辞の史的推移―「ネン」「〜テン」の成立とその機能―/一、「ネン」の生態とその出自事象/二、「ネン」の成立とその機能/三、「〜テン」の成立とその機能/四、断定辞「ヤ」の新展開/第四章 接続表現法/第一節 播磨・但馬方言の確定順接法―その史的推移と表現性―/一、播磨・但馬地域における確定順接形式とその分布/二、但馬地域における諸形式の存立状態/三、播磨地域における諸形式の存立状態/四、播磨・但馬域における「〜カラ」の存立状態/五、諸形式の動態補述/第二節 播磨・備前国境域方言の接続法/一、国境地域一帯の方言の接続法/二、確定順接形式の分布と意味作用/三、確定逆接形式の分布と意味作用/四、当該地域の接続法収束/第五章 婉曲・間接表現法とその推移/第一節 播磨方言の否定法―その形式の史的推移と意味作用―/一、否定形式の分布大概/二、「〜ヘン」形式の生成と意味作用/三、「〜ン」形式の衰退と意味作用/第二節 播磨方言における同意・確認要求の表現法/一、「〜ヤロ」形式による表現/二、「〜トチガウカ」形式による表現/三、「ヤンカ」形式による表現/四、同意・確認の表現法収束/第六章 特殊表現法/第一節 近畿北部方言における説明の一表現形式―連文の後文末尾の上昇調を中心に―/一、連文とその機能/二、「説明連文」の類型/三、「説明連文」の機能/四、上昇調の音調/第二節 近畿方言における特定の指示・呼びかけ表現―「見よ」形式の間投用法を中心に―/一、「見よ」形式による指示・呼びかけ表現/二、「見よ」形式の分布状況/三、文末に立つ「見よ」形式/第三節 近畿西部方言の間投表現法/一、指示代名詞系間投事象/二、人代名詞系間投事象/三、間投事象総括/第七章 生活語の世界/第一節 社会環境に生きる女性の生活語―その生態と特性―/一、女性の生活語/二、女性の敬語表現/三、女性の特定文末表現/四、女性の断定表現/五、総括/第二節 生活敬語法推移の軌跡―対話の表現心理―/一、敬語を生む日本語の風土/二、中央敬語と地方敬語/三、地方と地方敬語の論理/四、地方における中央敬語の活用/五、地方における中央敬語の衰退/第三節 人間関係を築く話しことば表現/一、話しことばの基盤/二、待遇の意識と表現/三、対話の他律性と強調性/四、対話を支える敬意の表現/五、対話を導く聞き手の立場/六、話しことばの場と表現/結章 方言の表現とその特性―方言表現特性論の試み―/一、方言研究の表現論的立場/二、方言の表現特性/三、表現特性の諸相/四、文表現上の特性/五、表現特性例節


 




 『助動詞史を探る』
 山口堯二著 本体9,000円

  (研究叢書304) A5・上製・函入 323頁 口絵3頁 ISBN4-7576-0230-8

 第一・二章に配した「「まし」の意味領域」「推量体系の史的変容」を、筆者の助動詞研究のいわば源流として、近年、力を入れてきた、助動詞史とその周辺に関する研究のまとめである。最も早い執筆の第一章は、古代語の共時態中心のものだが、第二章以下、いずれも通史的な見通しを重視する姿勢で探っている。「〈終止〉なり」「げなり>げな」「さうな>さうだ」に共通する、推定から伝聞への推移傾向を述べた第三章から、勧誘表現に進む分析化の傾向を探った第十章までは、狭義の推量体系の近隣に広がる問題を、「べし」「まじ」「じ」「まい」などの変遷を含めて個別に究明した。第十一章では、それらがともに「た」に収斂していく過程を探り、第十二章では、補助動詞の補完的なふるまいを探る。第十三章では、準助動詞的な「にて>で」に補助動詞「あり>ある」の共起が進む過程を探る。加筆も多く、構成を改めたものもある。

〔内容目次〕
はしがき 凡例 第一章 「まし」の意味領域 第二章 推量体系の史的変容 第三章 助動詞の伝聞表示に関する通史的考察 第四章 「べし」の通時的変化 第五章 中世末期口語における「べし」の後身―『天草版平家物語』の訳語による― 第六章 『天草版平家物語』の「まじい」と「まい」―原文との対照から見た打消推量の助動詞統合の歩み― 第七章 「まい」の通時的変化 第八章 「やうなり>やうだ」の通時的変化 第九章 「はずだ」の成立 第十章 勧誘表現の通時的変化 第十一章 完了辞・過去辞の通時的統合―「たり>た」への収斂― 第十二章 完了辞の統合にかかわる補助動詞の関与 第十三章 「である」の形成 後記 索引   



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