新刊案内(04年8月)


 『寺内町の歴史地理学的研究』
 金井年著 定価7,350円(本体7,000円)

   (日本史研究叢刊15)A5・上製 口絵カラー1頁・256頁 ISBN4-7576-0270-7

寺内町については従来文献史学、建築史学、さらに近年では考古学からも研究が行なわれ、単行本の形に結実したものも少なくない。しかし史資料の欠損部分があまりにも大きいため、全体としての研究の立ち後れは否めなかった。また既往の諸研究は圧倒的に畿内に集中していた。本書ではそういった点を踏まえ、これ迄看過されてきた寺内町についてもインテンシヴな考察を加え、さらに〈畿内型〉〈三河型〉〈北陸型〉という枠組みを設定して比較寺内町論の構築を試みた。これはそれぞれの地域における一向一揆との関連でのタイプ論であるが、ここでは地理学の概念である「都市プラン」をキーワードとして論じ、寺内町の形成過程や地籍図・空中写真等を駆使した中世段階での実態解明、さらには近世〜現代への連続性についても述べた。形態的側面からの考察が主体とはなっているものの、それはあくまで住民構成や防御的性格が形態にも色濃く反映されている、という前提条件に立ってのものである。

〔内容目次〕
序説/第一章 総論 T.はじめに U.寺内町成立の時代 (1)惣村と惣町 (2)物理的境界としての「構」 V.寺内町の性格 (1)都市計画としての寺内町 (2)寺内町成立の主体 (3)寺内町と「所質」/第二章 寺内町研究史 T.はじめに U.寺内町研究史 (1)戦前の研究 (2)戦後の研究 (3)近年の研究―主に一九八五年以降 V.寺内町についての論点 (1)蓮如・一向一揆と「寺内町」概念 (2)寺内町の系譜 (3)都市プランの溯及性/第三章 大坂石山本願寺寺内町の空間構造―最近の学説を中心に― T.はじめに U.史料の性格と研究史 V.四説の主張点 W.天野説の検討 X.他の三説について/第四章 寺内町の形態の類型とその変容 T.序説 (1)寺内町の定義 (2)発展段階による分類 (3)成立要因による分類 (4)形態による分類 U.寺内町の形態とその変容 (1)町の地形的立地条件 (2)条里制と社会的立地との関係 (3)寺内町プランの分析 (4)家屋型式からみた「都市的」寺内町と「農村的」寺内町 V.寺内町の変容系列と系譜―結びにかえて―/第五章 寺内町の形成と原集落 T.はじめに U.中世における集落化と環濠集落の形成 (1)集落化現象 (2)環濠集落の形成 V.寺内町成立の前提 W.寺院と町 X.寺内町の成立と原集落―萱振寺内町を例に Y.寺内町の形成過程―久宝寺寺内町を例に Z.結び/第六章 吉崎における中世的景観と近世的景観―絵図を通してみた― T.はじめに―研究の意義と方法 U.吉崎の古絵図 V.おわりに/第七章 久宝寺寺内町の考察 T.はじめに U.寺内町の成立主体・支配権の所在について V.寺内町プランの形成 W.寺内町の構成員 X.寺内町プランの変容 (1)目的と方法 (2)復原資料としての古絵図 (3)久宝寺寺内町の近世初頭〜明治期に至る景観的変容 (4)寺内町における寺院 Y.結語/第八章 寺内町プランの解明―枚方招提寺を例として T.はじめに U.招提の概略 (1)地理的概要 (2)歴史的推移―石山合戦以降 V.文書によるプランの復原 (1)文書の性格とその資料批判 (2)町の起源について (3)集落の原初的プランについて W.村域の拡大 X.招提村絵図の性格とその利用 (1)絵図の概略 (2)絵図の分析 (3)「新規屋敷」の拡大過程 (4)絵図の作製年代 Y.おわりに/第九章 三河の寺内町プラン―その特徴と畿内型寺内町との比較― T.はじめに U.従来の研究史 V.三河一向一揆と三河三カ寺・三河五カ寺 W.寺内町の立地とプラン (1)寺内町の自然的立地条件と寺内のスケール (2)上宮寺の絵図について (3)「寺内」の実態 (4)寺内プランの復原 X.畿内型寺内町との比較 (1)町の形成過程 (2)近世における変容 Y.結語/第一〇章 北陸の寺内町 T.城端と井波 U.北陸における「廃寺内町」 V.安養寺御坊とその寺内町 W.大泉寺と北野寺内町 (1)文献資料とその性格 (2)古道と地割 (3)北野寺内町と神社 (4)おわりに―端泉寺の復帰と市の移転 X.比較論に向けて/第一一章 歴史的都市の近代的変容―久宝寺・八尾両寺内町の事例 T.研究の意義と方法 U.通説とその問題点 V.近代初頭における八尾寺内町 W.人口変動からみた久宝寺と八尾 X.久宝寺と八尾の「逆転」 Y.総括/結章 T.中世都市と寺社 U.寺内町と城下町 V.寺内町の地理的類型―比較寺内町論の試み W.結語―歴史地理学の有効性/あとがき




 『ぼくは40年前から不登校だった』
 野近和夫著 定価840円(本体800円)

   (IZUMI BOOKS 8)四六・並製 111頁 ISBN4-7576-0271-5

「少年少女よ、がんばるな!」
著者は自身を今なお「依存性」と「回避性」人格障害の傾向大と見ている。生まれてこのかた「達成感」を得たことがないとも。にもかかわらず、かろうじて社会に適応できているのは、なぜか? ある種のずぶとさを別にすれば、それは「気づき」であろう。異なった考え方に思いをいたすこと。不登校の子どもたちと親、そして教師にも「気づいて」ほしい。著者の提唱であり願いである。

〔内容目次〕
まえがき/1 幼少期/2 生い立ち(ぼくの家族) (1)ぼく (2)父 (3)母 (4)祖父 (5)祖母 (6)妹/3 小学校/4
 西宮から歩く/5 レコードと本と地図/6 尊敬する人物/7
マミー/8 こいのぼり/9 相手に合わせる/10 消しゴム/11 電車通学/12 G先生/13 水練学校(サボタージュの最初)/14 中学受験/15 中学時代/16 国語の教師/17 貸本屋計画/18 中三の担任/19 はじめて学校をサボった日/20
通知簿改竄/21 高校受験/22 私立T高校/23 資金調達/24 家族の状況/25 予備校時代(中三コース)/26 大学入学/27 斜面の土地/28 父の死/29 教員採用試験/30
新設N高校/31 定時制高校/インタビュー形式で綴るあとがき(考察にかえて)/32 (追加)すきやき 



 『文化言語学序説 ―世界観と環境―
 室山敏昭著 定価13,650円(本体13,000円)

   (研究叢書316)A5・上製 597頁 ISBN4-7576-0273-1

ソシュールの恣意性の思想は、西欧の形而上学の伝統がゆきついた袋小路ではなかったか。そこでは、環境がそこに生きる人間の認識を規定する側面が全く無視され、その権限が言語の働きに全面的に委ねられることになった。こうして、人間・言語・環境という存在三世界の緊密なつながりが断ち切られたのである。今、大切なことは、言語学が軽視してきた意味生成・世界観構成の場への注目であろう。著者は、文化は言語に宿されるというテーゼのもとに、地域言語とりわけ生活語彙のシステムを、人間と人間が生きる環境の中間に位置づけ、地域に生きる人々の豊穣な生活知を背景として、意味生成・世界観構成の多様な場への侵入を果たし、環境概念を基軸として日本の地域文化の多様性とその構造を解明する。それはまた、人文諸科学が新しく目を注ぎはじめた地域文化学という総合科学を、生活語彙論を基盤として構築するための方略を提示するものである。

〔内容目次〕
T.文化言語学の構想/第1章 文化言語学について  /1.文化言語学の課題/2.文化言語学のサブカテゴリー/3.文化言語学と隣接諸学との相関モデル/4.生活語彙論における「意味概念」/5.文化的意味の内容/6.生活環境の概念/7.世界像とは/8.個別から普遍へ/9.文化言語学と認知言語学/第2章 文化言語学覚書/付記【狭義の文化的意味・生活的意味について】/第3章 文化言語学の特色と実践プロセス/1.日本方言学と文化言語学/2.文化言語学の特色/3.文化言語学の実践プロセス―その1例/4.文化言語学における調査する者と調査される者/5.今、方言研究者に求められているもの/付記【言語的価値と実用的価値】/U.文化言語学の理論/第1章 文化言語学の基本的な立場/1.言語観/2.文化観/3.対象とする言語事象(要素)/4.文化言語学における語の「意味」概念/5.空間と時間についての考え方/6.調査とデータについて/7.研究の最終目標/8.文化言語学の隣接諸学/9.研究に有効な語彙カテゴリー/第2章 生活語彙と地域文化/はじめに/1.生活語彙と民衆の認識世界/2.生活語彙と自然環境/3.生活語彙と社会環境/4.生活語彙における「生活の必要性」の原理/おわりに/第3章 生活語彙の比較研究の方法/はじめに/1.比較する内容/2.比較する対象/3.比較する形態/4.個人語彙と社会語彙/5.比較の方法/おわりに/第4章 方言性向語彙の共時論的研究の枠組み/1.方言性向語彙の発見とその後の研究の経緯/2.方言生活語彙の分類枠における性向語彙の位置/3.方言性向語彙研究の意義/4.方言性向語彙のシソーラス/5.方言性向語彙に関する共時論的研究の枠組/付記【言語と文化】/第5章 「認識言語」と環境/1「認識言語」とは/2.「認識言語」と「認知意味論」/3.「認識言語」の貯蔵庫/4.「文化」とは/5.「認識言語」の調査法/6.「認識言語」と環境適応/付記【構造主義における「人間不在」】/V.文化言語学の実践/第1章 漁民の「風」の世界観―広島県豊田郡豊町大長の場合―/はじめに/1.内容の構成/2.老年層漁民の風の世界認識/3.老年層漁民の風の語彙の構造と環境(言語外現実)との関係/4.風の語彙の地域性/5.風の語彙の変容/6.風に対する認識の変質/おわりに/第2章 アユノカゼの文化誌―漁民の「風」の世界観―/はじめに/1.アユノカゼの誕生と歴史/2.古代における「アユノカゼ」の分布地域/3.漁業文化としての風名/4.鳥取県東伯郡泊村を中心とする「性質呼称」の意味大系/5.日本文化の多元性の衰微/おわりに/第3章 風の方言から見た漁業社会―風位語彙による考察―/はじめに/1.これまでの研究の歴史/2.赤碕集落の地理的・社会的環境と調査の概要/3.赤碕集落における風位語彙の全容/4.赤碕方言における風位語彙の体系/5.赤碕方言における風位語彙の量的構造/6.山陰地方における4方言の風位語彙の比較/7.山陰地方における風位語彙の地域性/おわりに/第4章 農業語彙の体系と変容と生活史/1.目的と方法/2.田の呼称大系/3.谷の呼称/4.屋号語彙/5.田・谷の呼称大系と屋号語彙の体系に認められる世代差/6.古い語彙体系と新しい語彙大系/7.方言語彙の社会性と個人性/おわりに/第5章 瀬戸内海の一方言社会の生活語彙と環境/はじめに/1.調査の概要/2.野島方言における性向語彙の比喩の生成/3.比喩語彙に反映する自然環境・社会環境の特性/4.当該方言の性向語彙における程度性の細分化/5.当該方言における性向語彙の派生構造と社会的特性/おわりに/第6章 漁業社会の「波」の語彙/はじめに/1.姫路方言の「波」の語彙/2.姫路方言の「波」の語彙の記述/3.他の漁業社会の「波」の語彙/4.姫路方言の「波」と「風」/5.漁業生活と「波」の語彙/おわりに/第7章 漁業社会の「潮」の語彙と環境/1.潮/2.潮を捉える視点/3.潮の満ち干/4.網を入れる時間との関係で捉えられる潮/5.潮の大きさの変化/6.潮の速さ/7.地形・海水の層との関係で捉えられる潮流/8.潮流の部分/9.航行との関係で捉えられる潮流/10.季節の潮/第8章 山陰地方の漁業社会の生活語彙―「潮」の語彙を中心として―/はじめに/潮流の方位に関する語彙/2.潮流の遅速に関する語彙/3.潮の干満に関する語彙/おわりに/第9章 広島県方言における性向語彙の地域性/はじめに/1.共有語彙と特有語彙の認定方法/2.備後方言と安芸方言の地域差/3.備後方言と安芸方言の特色/4.広島県方言の特有語彙/おわりに/付記【(意味システムを骨格とする)語彙システムによる日本の言語文化の多元性の確認】/W.文化言語学の周辺/第1章 言語の機能―そのパースペクティブ―/1.言葉のもつ機能/2.言葉の志向性の世界/3.生活知への旅立ち/4.言葉の機能のパースペクティブ/付記1【語感、ニュアンスと広義の文化的意味】/付記2【狭義の文化的意味(生活的意味)と語源】/付記3【「認知の制約」と「環境世界の意味づけ」】/第2章 〔書評〕柴田武著『語彙論の方法』/付章 広島県方言の性向語彙資料/はじめに/性向語彙の分類体系試案(シソーラス)/広島県方言の性向語彙資料/参考文献/あとがき



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