新刊案内(05年9月)



『口承文芸の表現研究―昔話と田植歌―
田中瑩一著 定価12,600円(本体12,000円)
  (研究叢書337)A5・上製函入 ISBN4-7576-0323-1

口頭伝承の世界に成立してきた文芸の中から散文伝承としての「昔話」と詩的伝承としての「田植歌」を主な考察対象としてとりあげ著者独自の方法論にもとづいて進めた口承文芸の表現研究の成果を体系的に論述した。
 昔話の研究はこれまで民俗学あるいは文化人類学の立場から進められることが多く文芸としての研究は必ずしも十分な進展を見せて来なかった。本書は著者の半世紀にわたる現地調査の成果にもとづいて考察を進め、昔話の文芸としての特質を明らかにしたものである。
 田植歌の研究は中世の歌謡を伝えると言われる『田植草紙』とその周辺の「田植本」の考察を通して進展してきた。本書は著者があらたに発掘した「田植本」を考察対象に加えて伝承の全体像を視野に入れ、歌謡史における田植歌の豊かな鉱脈を明らかにしたものである。

〔内容目次〕序章 口承文芸の表現研究序説 第一部 昔話の表現研究 第一章 昔話の表現研究―対象と課題/第二章 昔話の構造と表現/第三章 昔話に見られる「うた」の諸相/第四章 出雲の「仁右衛門話」における笑いの表現/第五章 「形式譚」の表現 第二部 田植歌の表現研究 第一章 田植歌の表現研究―対象と課題/第二章 中国地方東部(出雲地域)に伝承される田植歌の表現―ナガレ構成の田植歌の特質/第三章 中国地方西部(石見地域)に伝承される田植歌の表現―オロシ構成の田植歌の特質/第四章 新宅屋本「歌乃雙紙」校訂本文並びに脚注(付 影印)/参照文献/参照田植本目録/あとがき/田植歌句索引/事項索引T(昔話関係)/事項索引U(田植歌関係)




『萬葉集作者未詳歌巻の読解 歌とその神話・祭祀・法制・政治など
今井 優著 定価7,875円(本体7,500円)
  A5・並製カバー装 ISBN4-7576-0332-0 

 作者未詳歌諸巻二千余首の詠物、春夏秋冬、雑歌、相聞、正述心緒、寄物陳思などいう分類は、多分に外形的で便宜的な歌の処置である。この分類を通して見ているだけでは、これら歌々の制作事情は見えて来ない。本書は歌々をこの枠組みから一度解放し、発生成立時のものと目される歌の意図を推察しつつ、歌々を再群化するところから歌の読解を開始した。そして巻十一、十二は諸国の産物とその貢納を主宰する大物主神祭祀を場とする歌々、巻十は氏人の氏神祭祀を場とする歌々、巻十四は道奥の開拓を祈願して行われた春日山での武甕槌・経津主両神祭祀を場とする歌々であるという推論に達した。歌々の再群化に当たって最も要請されたことは、それぞれの歌の正確な意味把握であった。ところがこれら諸巻では歌意不明確なものが少なくないので、それらに関しては一定の解を与え、また従来の誤解を正した。そのような点で本書は作者未詳歌諸巻の注解書でもある。

〔内容目次〕序章 1作者未詳歌巻に作者名のない理由 2作者未詳歌巻に題詞のない理由 3本書の読解方法、歌を再分類すること 4本書の要点 5本書所掲の本文について/第一章 巻十一、十二の読解 1まず日本令の婚姻規程を読む 2男夫の女家への通い 3男夫の通いを妨げるもの 4婚姻の不成立 5婚前の交際禁止 6「こもり」の意義 7アマテラス―スサノヲ神話の意味分析 8「スサノヲ」の名義は「ササノヲ」である 9三十一文字はスサノヲに始まったという伝承の根拠 10婚姻成立を願って神の宥恕を乞う 11婚姻の成否は年終に定まった 12「こもり」は稲の播種から始まった 13「恋死」とは何か 14歌には罪を除く呪能があった 15巻十一、十二の歌々の原風景 16恋歌は神楽歌である 17海辺の勤労と恋 18貢納物京送を描いた歌 19課役を描いた歌 20「中男」という青少年の存在 21「三輪大物主」の性格 22「三輪山」の歌宴/第二章 巻十の読解 1山に視線を注ぐ歌 2「我がやど」とは 3「山斎」とは 4「門田」とは 5山に入る歌 6「我がやど」の歌宴 7叙景歌の時刻 8氏神祭りの変遷 9梅花の歌 10巻十の「相聞」 11巻十の七夕祭 12氏神祭りの文献資料 13巻十の歌の心/第三章 巻七の読解 1深夜月下の歌宴 2祖霊詣での歌 3「宇治川」の歌「宇治人の喩ひの網代」など 4「住吉」行楽の歌 5羈旅の絵と歌 6国土を描いた絵と歌 7巻七旋頭歌の解(1) 8巻七旋頭歌の解(2)「住吉の波豆麻の君」「依網の原」「近江県の物語」など 9巻十一の旋頭歌の解「長谷の弓月の下に隠したる妻」など 10「楽浪の志賀津の海人は我なしに」など 11「譬喩」歌の方法 12巻七の「挽歌」/第四章 巻十三の読解 1神奈備山の長歌「汗瑞能振」の訓み方など 2国土を謳う長歌「汝が母を取らくを知らに」「行靡闕矣」など 3養老の長歌 4「相聞」の長歌 5斎女を描いた歌 6里より去り行く神の歌「里人の我に告ぐらく汝が恋ふる」 7元服式の歌 8「すろめき」の失態「黒馬の来夜は常にあらぬかも」など/第五章 巻十四の読解 古今和歌集東歌に及ぶ 1東歌「相聞」の様態 2東歌「相聞」の目的 3身役の苦渋 4東国の政治事情 5「道奥」への移住「寸戸のはやし」など 6「駒」の歌「己がををおほにな思ひそ」など 7豪農と貧農 8東国「鹿島」「香取」の神と「春日山」の神 9古今和歌集の東歌/後語/萬葉集歌索引



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